「地味は悪」という家庭環境で暮らしていると、自分の美的センスがやや世間とずれていることに、なかなか気付くことがない。
両親のお気に入りのブランドは「メゾン・ミハラヤスヒロ」「SACAI」「TOGA」。祖母は洋服や宝石の買い物が趣味だったし、数年前から急にお洒落に目覚めた弟は、毎週末に堀江やアメ村の古着屋を巡っている。そんな私は、コム・デ・ギャルソンをこよなく愛している。

姉と兄の結婚に触発され、「脱処女大作戦」として、婚活開始

髪の毛はできる限り奇抜な色にしたい。ピアスもできる限りギラギラとして大きいものを着けたい。指輪もネックレスも忘れずに装着したいし、それから服は、全身黒一色でありたい。しかしそんな私は、急に婚活ということをしてみることにした。
というのもここ数年の間で、姉と兄が立て続けに結婚した。にも関わらず私は27年間、一つも恋愛経験がない。彼氏ができたことはおろか、仲の良い男友達もいない。そこで高校の友人3人と、半分冗談、半分本気で「脱処女大作戦」を始めることにした。

キスはおろか、手を繋いだこともない。27歳になってこんなにも恋愛経験のないことが珍しいのは、重々承知している。世の中にいる同じ年生まれの女のほとんどが、恋の先輩である。友人3人が言うには、婚活でウケがいい女というのは以下の条件であるらしい。
・アクセサリーは控えめ
・無難な服に無難な靴
・ナチュラルメイク
・肌艶はよく、髪の毛はサラサラで清潔感を

心惹かれる人にはなかなか出会えず、デートはいつも2時間以内

まずはマッチングアプリをダウンロードし、2ヶ月間で3人の男の人とデートした。でも誰もピンとくる人がいなくて、せっかく地味で無難にして会ったのに、全員と2時間以内に解散してしまった。帰り道には欠かさずお礼の連絡は入れたものの、2回目のデートに繋がる人は一人もいなかった。

友人達には「3人なんて生ぬるい」と言われたけれど、マッチングアプリに私の心惹かれる人はいないと悟り、さっさとやめてしまった。もしかすると芸術肌の人がいいのか、と思って芸大の頃に好きだった大学の先輩ともデートしてみたけれど、なんだか無駄に疲れてしまって、この人とも2時間ほどで解散してしまった。

先日は、生まれて初めて「街コン」に参加してみた。男女が6人ずつ、ブースに入って1対1でお話しする、という形式だった。
その日は、可愛いワンピースを着て、髪の毛はサラサラにし、ピアスは小さくて揺れるものを。メイクもナチュラルに仕上げた。上着だけは、「どうせ脱ぐしな」と思って、お気に入りの黒の革ジャンを着ていった。

複数の男性から好印象をもらい、少しだけ自己評価を見直すきっかけに

猛烈に緊張しながら、会場に入った。プロフィールカードに記入して、始まりの合図を待つ。どんな男の人が来るのか、かなりドキドキしていたけれど、最初に話した男性は良い匂いのする、素敵な人だった。
6人の男の人とのトークタイムが一巡すると、「第一印象カード」というものに、印象の良かった男性の番号に丸をつけて提出する。それはすぐに、誰が私の印象が良かったと答えたか記入されて返されるのだが、基本的に自信のない私は「0だったらどないしよ……」と恐れていた。
しかし返ってきたカードには、丸が4つ書かれていた。6人中4人の男性が、私の印象が良かったと思ったらしい。意外だった。元々見た目も中身も自信がなくて、モテないことを開き直っていたのに、もしかしたら自己評価が低かったのかな、とさえ思った。

結局、その街コンで私は誰ともマッチすることがなかった。しかし初回としてはなんだか楽しかったし、ちょっとだけ自己評価を見直すきっかけにもなった。そして私は可愛いワンピースの上に、お気に入りの革ジャンを着て颯爽と会場を後にした。

その姿が我ながら、猛烈に格好良かった。男ウケを気にする、とは一体何なんだろうか。在りたい自分でいて、それを好きになってくれる人を待つのは、無理なものなのだろうか。
自分らしくいたい気持ちと、男ウケしたいという気持ちの間で揺れながら、私はこの先どうしていくのだろう。