毎週月曜日の深夜、私は爪の装飾を落とす。まっさらになった爪に396円のネイルポリッシュで再び色づける。
2時間かけて作り上げる、1週間しか持たない平凡な指先。平凡で短命だけど、私にとっては特別な指先。

友人の可愛い指先にときめき、私も「ネイルサロン」に興味を持った

高校を卒業して、半年ぐらいたった。仲の良かった高校の同級生たちと女子会を開いた。そこで、友人の1人がネイルサロンに通い始めた話になった。友人の可愛い指先にときめき、私もネイルサロンに興味を持った。
その日教えてもらったサロンを帰りの電車に乗りながら調べていた。HPの料金表を見て、「私には無理だ」一瞬でそう判断できた。
最低価格の単色メニュー5,000円でも、正直厳しい。友人のしていた可愛いネイルアートメニューは、7,000円。それを毎月と思うと、バイト代で大学の学費を支払っている私には手が出せない金額だった。

ネイルサロンは諦めたけど、指先をきれいに着飾りたいと思った私がまず始めたこと。それは、家にあったネイルポリッシュを自分で塗ってみることだ。YouTubeで「マニキュア デザイン」と検索し、動画とにらめっこしながら数時間格闘した。
数時間の格闘の末、抱いた感情は「なんかブサイク、ちっとも可愛くない」。何度もトライしたが、友人のようなネイルがしたいという高い理想故に、私は自分の指先に納得できなかった。

デザインも可愛くて、おしゃれで、心がときめく「ネイルシール」

そして、次に行きついたのがネイルシールだ。通販サイトを見ているだけですごく幸せな気分を味わえた。どのデザインも可愛くて、おしゃれで、心がときめいた。
1シート1,200円、1回あたり600円。ネイルサロンほど高くないけど、ネイルポリッシュに比べるとかなり割高。
当時ネイルシールは日本ではあまり注目されておらず、韓国の通販サイトで個人輸入をしなくてはいけないなど購入のハードルが高かった。かなり悩んだが、私もサイトの写真のような指先になれるという期待感に後押しされ購入を決めた。
ネイルシールは大満足の結果だった。不器用な私でも貼るだけなので、簡単にサロン級の仕上がりとデザイン性を手に入れることができた。友人たちにも褒められ、すごく気分がよかった。

だが、ネイルシールもやめることにした。ネイルシールを消費すればするほど、意味のないものに思えてきたのだ。
やめてから自分の本音に気が付いた。ネイル自体は好きだが、ネイルアートは、他人がしているからよく見えるのであって、本当に自分が手に入れたかったものではなかったのだ。

396円のネイルポリッシュ。着飾らず、シンプルに。

そして私は、ドラックストアで単色かつシンプルに塗っても似合いそうな396円のネイルポリッシュを買った。ネイルと出会い、始めたての頃はネイルポリッシュを単色で塗ることしかできない自分の爪がコンプレックスで避けていた。
だが、今ではシンプルだからこそ技術力が試される単色塗りの虜になっている。「めっちゃきれい、どこのサロン?」と聞かれるほど上達したことが誇らしい。

7,000円のサロンのネイルアートも、1,200円のネイルシールも、私にとっては贅沢な価格。ないものねだりで貴重なお金を消費するよりも、背伸びせず等身大の私でいられることに、無理のないお金をかける方が幸せということがネイルを通して学べた。何よりも「着飾らない自分も悪くないじゃん」と思える自分になれたことがうれしい。

これからネイル以外にも、欲しいもの、お金をかけたくなること、背伸びしたくなること、様々な場面に出会うだろう。その時は、自分の平凡で短命だけど特別に思える指先を見て、今回の話を思い出そうと思う。そして、自分の気持ちやお財布とうまく付き合っていこうと思う。