素敵な世界と描いた理想、猛烈な孤独と絶望を感じた現実

初めての一人旅は16歳の時だった。
行き先はオーストラリアで、私にとって初めての海外旅行でもあった。高校の夏休みを利用したホームステイ体験だったので、正確にいうと「旅」というほど大げさなものでもないのかもしれないけれど、16歳の私にはワクワクドキドキの大冒険だった。
そんな、10年以上経った今でも色褪せることなく私の心の中でキラキラしている大切な思い出について、シェアしたいと思う。

全てが新鮮で、新しくて、想像を遥かに超える素敵な世界。これからどんな冒険が始まるのだろうと心をときめかせて訪れたオーストラリアだったのだけれど、実は到着初日に酷いホームシックになってしまった。

ウェルカムムードというよりはお仕事の一貫として部屋を貸しているだけ、というようなさっぱりしたホストファミリーだったこともあり、当時英語が堪能でなかった私は現地の人達と満足に意思疎通を図ることができず、新しい環境や文化の違いに猛烈な孤独を感じてしまったのだと思う。
正直に言うと1日目の夜は特に寂しくて、想像していたのと全く違う孤独な生活に数週間もの間耐えなければいけないのかと思うと、絶望的だったのを覚えている。

多種多様な人達との出会いと交流が、16歳の私の世界を大きく広げた

予想外の現実に直面した初日だったけれど、幸いなことにそんな辛い時間はすぐに消え去ることになった。
新しい人達との出会いだ。滞在3日目からは語学学校で短期のクラスを取ることになっていて、そこでたくさんの人達に出会うことができたのは幸運だった。
私と同じく夏休みを利用して短期留学をしている同世代の日本人の子達や、ワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアを横断しているカップル、サリーを着たインド人の女の子に、旅をしている韓国人の男の子、本当に様々な人達がいた。
多種多様な人間がそれぞれ目的をもって異国の地で出会い、多かれ少なかれ交流をしてまた別れるという体験は、16歳の私にとってすごく新鮮で自分の世界を大きく広げるものだった。

彼ら、彼女らとはすぐに仲良くなり、皆で色々な場所を旅した。
世界遺産のグレートバリアリーフでシュノーケリングやパラセーリングをしたり、海辺でバーベキューをしながら語り合ったり、どれもこれも楽しくて宝物みたいな思い出ばかり。
最初はどうなることかと思ったホームステイ生活も、ある意味日本人とは違う価値観に触れ、現地の人の生活を間近で見ることができたので、とても良い経験だったと思っている。

人生は無限大。自分の好きなように、自由に生きていいんだ

思い出語りで一冊の本が書けてしまいそうなくらい濃くてディープな日々だったけれど、数週間のオーストラリア滞在はあっという間に終わってしまい、皆とは「また、いつかどこかで!」と言い合ってお別れをした。
もちろんその場限りになってしまった人もいるし、今だに連絡を取りあっている友人もいるけれど、あの場所で皆に出会うことができてよかった。
最高の出会いばかりだったので、1日目の夜にホームシックだったことが嘘みたいにオーストラリアは私にとって特別な場所になり、最終日は逆に帰国することが億劫に感じるほどだった。

旅を続ける人、それぞれの生活に戻る人。当時16歳の私は、人生は無限大で自分の好きなように、自由に生きていいんだということをあの時、オーストラリアで学んだ。
新しい場所を訪れると、全く違う価値観を持った人々に出会うことができ、運が良ければその人達と友達になることができる。人と人の出会いとは不思議で尊いものだなとつくづく思うし、だから旅はやめられない。

新しい世界を自分の目で見て、その土地の空気を自分の肌で感じる経験はいつも私を成長させてくれるから、私は旅を通してたくさんのことを学ぶ。
これからも、まだまだたくさんの場所をこの足で訪れ、見たことのない世界を探索するつもりだ。