東京というコンクリートジャングルは、お金がないと何も出来ない。
というか、もらえるお金と必要なお金が釣り合わない。
稼いだ給料の半分は固定費に持っていかれ、東京での一人暮らしは過酷
夢を抱いて東京にやってきて、アルバイターになった。
上京して一人暮らしをするまで、自分でお金を稼いだ経験もなければ、自活した経験もない。大学時代もなんだかんだと親の仕送りで生活していた私にとって、親の庇護下から抜けての東京での一人暮らしは過酷だった。
まずもって固定費がえげつない。
家賃に水道、電気にガス。毎月の通信費。
稼いだ給料の半分は固定費に持っていかれることに驚いた。
給与明細を見て、将来お世話になれないであろう年金やら保険やらに月に2万も3万も持っていかれていることを知って天を仰いだ。
ここに食費や交通費も必要になってくる。
夢を追う以前に必要最低限の生活を送るのもギリギリで、時給1000円を切るような大学時代のバイト先では食べていけない。
私は必死で求人サイトを巡った。
やっと見つけたコールセンターは、ロクな研修もないままPC操作も覚束ないおじいちゃんおばあちゃんのネットの困り事を解決する部署。
ひっきりなしに鳴る電話と余裕のない表情の同僚がすし詰め状態の会社は、分からないことを質問する事も出来ない雰囲気に負けて、長くは続けられなかった。
結局、古巣が人手不足からくるラブコールを寄越して来たので、賃上げ交渉をして私は元鞘に収まった。
年齢が上がっても少ししか増えていない収入と、増えていく必要経費
東京で一人暮らしをして10年。
私が得た教訓は、技術も能力もなく出来る割りのいい仕事なんて、体力的にキツいか精神的にキツいかのどちらか。
技術や能力を身につけたいと思っても、生きていくだけで精一杯で時間も費用も捻出出来ない。
夢を見るには東京近郊に太い実家が必要。
というものだった。
20代前半までは夢という輝かしくて実態のない何かの為にいくら生活が厳しくても我慢できたが、27を過ぎ30の大台が視界にちらつき始めるとそうも言っていられない。
普通に就職した周りには役職がつき始め、結婚ラッシュがやってくる。
何ヶ月かおきにやってくる3万円のご祝儀は非正規雇用には用立てるのも難しい。学生時代の友人がグループLINEで式の日取りや引き出物で盛り上がっている中、私が知らないところで勝手に結婚してくれないかなあ……と、寂しい預金残高を見ながら思う。
此処からは身体にもガタが来ると聞くし、必要経費として増えていくお金はどんどん増えていくんだろう。
なのに、年齢が上がっても学生時代にちょっと毛が生えたくらいの収入しかないのが辛い。
年収アップを目指す就職活動もなかなか上手くいかず、流行りのポイ活やクラウドソーシングに手を出してみた。
多少の満足感はあれど、大きく生活が変わるわけでもない。
このままこんなふうに年老いて行くのだろうかと思うと、時々無性に不安になることがある。
夢を叶えるための「手段」だったお金はいまや「目的」に
最近、私の勤め先は雇用年齢の大々的な引き上げを行った。
その流れを受けて、所属店舗にも還暦を超えたおじいちゃんが新しくバイトとして入ってきている。
朝はコンビニでバイトをして、昼から夜までうちで働くらしい。
家電量販店は覚える情報量も膨大で、スピード感だって求められる。
お世辞にも楽な仕事ではない。
配属されて一週間経っても未だにレジ一つまともに打てず、イライラした顧客に怒鳴られている姿を見ていると、いつかは自分もああなってしまうのではないか……と暗い気持ちになる。
夢を叶える為の「手段」だったお金は、なんとか必要最低限生きていくために必要な「目的」になってしまった。
別に大金持ちになりたいわけじゃない。
友人の結婚式を心から祝福したい、お金がお金がと色々な心配をしたくないだけだ。
これはそんなに贅沢な悩みだろうか。
とにかく東京はお金がかかる。