全てから逃げ出すため、少ない所持金からヨーロッパ行き飛行機を予約
全てから逃げ出したい。
誰も知らない誰にも干渉されない場所で自由になりたい。
大学生だった私は、進路も大学も家族関係も恋愛もうまくいかず、苦しくなり逃げ出した。
手元にあった10万円で、ヨーロッパ行きの飛行機を予約した。旅行期間は1ヶ月。
あとは出発の日までに稼ぐことが出来たお金で寝泊まり、食事をするというなんとも無茶な、計画ともいえない計画だ。
出発の日までの2ヶ月間はひたすらに働いた。
2ヶ月後の自分を楽しませるためという目標のためなら、どんなに苦しいことがあっても希望を持って生きられた期間だった。
いざ初めての海外一人旅へ。言葉も話せるのは辿々しい英語だけ。
もうどうにでもなれという捨て身の気だったからか、不思議と怖さはなかった。
トラブルも必死に楽しんだ。
美しい都市や音楽に心動かされながら、自分は何をしたいのか考える
まずは東ヨーロッパへ。見たこともない壮大な自然や社会主義の跡のような建築。
牛の行列に行手を阻まれながら、山を登り天国に一番近い教会を訪れた時の鼻に入ってくるツンとした澄んだ空気を今でも覚えている。
日本人は珍しいらしくジロジロと見られるが、初めて見る未知の都市・市場に心躍らせながらひたすらに歩いた。
次はギリシャを経由し西ヨーロッパへ。
飛行機から見た夜明け空の、吸い込まれそうな深い青と暖かいピンク色。
濃紺のエーゲ海の美しさは今でも鮮明に思い出すことが出来る。
西ヨーロッパではトラブルに巻き込まれ到着に苦労した。
しかし、「私は問題を抱えている」と声を上げると、手を差し伸べてくれる人もいた。
到着して初めて食べたピザがあまりにも美味しくて涙が出た。
大袈裟だと言われるかもしれないが、今日まで生きてきて、心動かす瞬間を味わえてよかった。
自分を守ることが出来るのは自分だけという危機感がありながらも、毎日のんびり散歩して出会った人と話し、人々の生活を眺めながら公園のベンチでダラダラした。
美しい都市や音楽に心動かされながら、自分は何がしたいのか、どう生きたいかを悶々と考えながら過ごした。
苦しみ続けたからこそ旅で気づけた、成長生産をすることが好きなこと
旅も2週間以上経った頃には、だんだんと消費をし続けることに疲れが出てきた。
毎日散歩し、ダラダラする日々から抜け出したくなってきた。
そうだ。私はもがきながらも進み続けたいんだ。
あれほど抜け出したいと思っていた日々も、もう一度戻って自分の人生を拓きたい。
些細なことでも良いから成長生産をすることが自分は好きだと思うことが出来た。
それまでに苦しみ続けたからこそ、旅の中で味わい気づくことが出来たと思う。
今は、社会人となり東京で働いている。
人は簡単に変わることが出来ないので、相変わらず周囲に気を使いすぎたり、自分が思うように何も出来ないことに苦しくなったりする。
ただ、あの時の苦しさや旅での心動かされる経験、日常をもがくことは自分にとって案外大事であることに気づけたことは心の隅で存在感をはなっている。
私にとって旅は逃避であり、希望であり、瞑想である。
その贅沢を味わい尽くすために日々をもがき続けたい。
苦しくなったらまた旅に出ればいいじゃない。