わたしに旅が必要な理由。
それは、想定外の事態に強くなれるから。
海外旅行なんて、言ってしまえば想定外の事態の連続だ。

「一人で何でもこなせる」メンバーで、初めてのメキシコへ

私には忘れられない旅がある。
2019年の夏に友人と3人で行ったメキシコ旅行だ。

一緒に行ったのは高校時代から仲の良いメンバー。
なぜわざわざメキシコに行くことになったかと言うと、そのうちの一人が「先輩が今メキシコで働いていて、会いに行くけど一緒に行く?」と声をかけたことが始まりだった。
私自身、たまたまその時期にSNSでメキシコに行っている人の写真を見て、自然がたくさんある素敵なところなんだなと惹かれていたので、その話にすぐに飛びついた。

いわゆるハワイやニューヨーク、イタリア等のように、日本人が旅行でよく訪れる観光地とは少し違うので、若干の不安もあったが、私たち3人なら大丈夫だろうと思っていた。

なぜなら、私たちは3人共とても自立しており、車の運転やホテルの予約、英語でのコミュニケーション、チケットの手配等を難なくこなすことができるからだ。
自分で何でもできるということは素晴らしい長所でもあるが、同時に、20代後半になっても3人とも独身である理由を、その「一人でも生きていけるたくましさ」だと分析していた。

日本だったらお祓いに行くレベルの災難。それでも楽しかったのは…

そんな3人で行ったメキシコ旅行で起こった想定外の事態は、ざっと以下の通りだ。

トランジットの際に飛行機が遅延し、異国の空港内で学生時代ぶりに猛ダッシュしたこと。
環境保護のため日焼け止めの利用が禁止されているエリアがあり、その結果全身に事故レベルの日焼けを負ったこと。
自然豊かなホテルのバルコニーで夜通しおしゃべりをしていたら、3人合わせて500箇所くらい蚊に刺されたこと。その蚊が海外特有の強い蚊だったようで、しばらくずっと痕が残ってしまったこと。
帰国2日前に財布を紛失し現金、クレジットカード、免許証を失ったこと。

何でも一人でできてしまう私たちでも、さすがに経験したことのないレベルの事件の数々。

一見すると災難続きだったが、これらの想定外の事態を3人でなんとか乗り越え、この旅行は私の人生最高の思い出になった。

もし日本で普通に生活している時にこれと同じことが起こったら、「どうしてこんなについてないんだろう」「日頃の行いが悪いせい?」「お祓いに行くべき?」などと悩んでいただろう。
でもその時は、メキシコの明るい気候と大自然、現地の人たちの陽気な雰囲気のおかげか、「これも良い思い出だよね!」と明るく乗り越えることができた。

自分たちで対処する経験。一段と強く、魅力的な大人に

旅をすると、良くも悪くも普段の生活では体験しないような事態に巻き込まれる。それを誰かに頼るわけでもなく、自分たちでどうにか対処しなければならない。その経験によって、人間として少し成長できるような気がする。

想定外の事態に強くなるということは、自分で対応できるキャパシティが増えるということだ。キャパシティが増えると、そこから余裕が生まれる。余裕が生まれると、些細なことでイライラしたりせずに、常に落ち着いていられる。そして人にも優しくできる。

メキシコ旅行の帰り、私たち3人は「また一段と強い女になってしまったね……」と話したが、この旅行での体験を通して人間的に成長し、より一層魅力的な大人になることができたと信じたい。