自分にとっての「旅」がストップした、と絶望した瞬間
学生時代、アルバイトで貯めたお金をすべて使って、よく海外旅行に行っていた。
シンガポール、マレーシア、イタリア、台湾、フランス、スペイン、ベトナム、トルコ、ギリシャ……。初めて見る景色、見慣れない英語の看板、日本にはない食べ物、受け入れてくれる現地の人々。どの国での経験も鮮明に思い出せるし、どの思い出も私の宝物である。
そのため、「旅」と言われると海外旅行をイメージしてしまう。
新型コロナウイルス拡大により、海外への渡航を制限されてしまった今は簡単に海外に行くことができなくなってしまった。
自分にとっての「旅」がストップした、と絶望した瞬間である。
心から旅が好きなんだと感じる友人のしーちゃん。話を聞いて驚いた
でも実際、そんなことはなかった。
現在暮らしているシェアハウスで出会った友人・しーちゃんは、よく旅をする子で、海外へ行けなくなってからは日本中を旅している。
バックパックに荷物を詰めて、「来週は〇〇に行くんだ〜」と楽しそうに話してくれる姿から、心から旅が好きなんだと感じる。
しーちゃんは旅先であまり計画を立てず、ぼーっと過ごしたり、現地の人と仲良くなって一緒に行動することもあるんだそう。
それを聞いて、驚いた。
自分は旅をするのであれば、観光名所は一通り回っておきたいし、そこでしか味わえないものを堪能したい。せっかく来ているのだから、と朝から晩までみっちりとスケジュールを立て、その通りに行動していた。
旅行に行くと、「1分1秒でも無駄にしまい」と自分の中のもったいない精神が働くため、しーちゃんのように旅先で何もせずのんびりと過ごすなんて、考えたこともなかった。
海外に行けるのはまだ当分先になるだろうから、2022年はしーちゃんのようにのんびり過ごす旅をしてみようかな、と思うようになった。
今年1発目の旅。千葉・勝浦のゲストハウスに足を運んでみると
そして2022年1月3日。今年1発目の旅として、しーちゃんが年末年始のあいだ住み込みで働いている、千葉・勝浦のゲストハウスに足を運んでみた。
そこには、何か目的があって訪れたのではない(もちろん、しーちゃんに会うためではあるけれど)。ただ、ぼーっとするために足を運んだのだった。
東京から電車で片道3時間半。ちゃんと「旅」である。
その間、寝たり、本を読んだり、日記を書いたりして自由に過ごした。
駅に着くとしーちゃんとゲストハウスのオーナーさんが「ようこそ〜」と迎え入れてくれて、なんだかほっこりした。
どう生きるか。ゆっくりと過ごし、自分と向き合えた気がする
そのゲストハウスは、海から徒歩30秒ほどの位置にある。
しーちゃんが働いている間、海岸を端から端まで歩いてみたり、写真を撮ったり、本を読んだり、寝たり、ぼーっとしたり。ここじゃなくてもできるような、いや、ここだからできたようなことをしてゆっくりと過ごせた。
なにより、この時間で自分と向き合えた気がする。これからどうやって生きていくか、どんな人と歩んでいきたいか、ものすごく真剣に考えた。
都会は散歩をしているだけでたくさんの情報が入ってくる。人々の会話、広告、呼び込み。意識せずとも、耳や目に入ってきた情報のことを考えてしまっているだろう。
これまで自分が「旅」と定義してきた「しっかりと計画を立てて1日中歩き回る旅」はもちろんこれからも続けていきたい。
でも、「何も考えずぼーっと過ごす旅」も新しく導入していきたいと思う。
2022年、新しい旅の様式が始まってゆく。