大学2年生のゴールデンウィーク、なんとなく新しいことがしたいと、ぼやぼやした思いのままゲストハウスのヘルパーを探していた。見つけた場所はゲストハウスにも行ったことがないのに、これは絶対面白いとSNSを見て思った。お客さんではなく、ヘルパーとして。
初めてのゲストハウスは海の近くにある古民家。波の音が心地よく聞こえるくらい海から近く、大きな引き戸を引くと海が見える。そんな場所で10日間、たくさんのお客さんを迎えた。
素敵な人と出会うゲストハウスいる間に、もっと素敵な方に出会った
そこで出会うたくさんのゲストさんは、まだハタチだった自分にも対等に接してくれる優しい人ばかり。ただ、このゲストハウスにいる間にもっともっと素敵な方に出会った。
それは近くにあるインド料理屋さん。1年に4回くらいインドに行ってしまうくらいインドが大好きなオーナーさん。なんとなくバックパッカーという言葉に憧れていたそのころ、インドという国にも憧れを抱いていた。空港に降りたらスパイスの匂いがする、毎日カレーを食べている。そんなどこかで仕入れてきた本当か嘘か分からない情報に、なぜかうきうきしていた。そんな時に出会ったインド好きな人。
聞きたいことばかりだった自分にその人は、なんで旅が好きなの?と聞いてきた。
人のためになるから。現地の人のためにいいことができるから。そんなおこがましいことを考えているのに、大した言葉にできてなかった自分に、その人は色んな国に行ったときの話をしてくれた。
自慢話ではなく、自分のために広い世界のことを教えてくれたその人
インドで出会った親のいない子どもたち、チベットで出会った日本人の青年、ベトナムにいる友だちの話。
旅に憧れていたその頃の自分は、夢を見ているように想像しながら全部の話をずっと聞いていた。自慢話とかではない、目の前にいる自分のために広い世界のことを教えてくれた。それまで出会っていた大人の人の旅の話は自慢話のようなことのように感じていた。
経験の多さは自分を棚にあげさせようとしてしまうのか、そんなことまで思っていた。でも、その人の話は違う。旅はみんなが好きになれるものでもないし、好きになる必要もないということも。
世の中にはたくさんの人がいて、その中で自分は旅が好きな人で、現地のインドを伝えられる立場にいる。だからお店を開いている。ただ、好きなインドという場所を日本で伝えたい、そんなシンプルな思いでそこにお店を構えている。
旅は「人生を変える」ために行くのではなく、軽い気持ちでもいい
その時から、旅に出ようと、この人のように世界を見られるようになりたいと思うようになった。自分の人生を変えたい、ましては何か現地でいいことまでしちゃおうなんてことまで思っていた。
でも旅はそんなことじゃない、求めているものを受け取るために行くものじゃないということを知った。もしなにか気になってくれる人がいるなら、伝える。それくらいの軽い気持ちで旅をしてもいい。そんなことも学んだ。
それからは、海外に行くことも国内を旅することも、なんとなくという気持ちだけで気軽に行けるようになった。
それでも旅には学びがある。たくさんの人に出会って、たぶん少しは広い世界を受け入れる自分の器が大きくなったと思う。
旅をするときは、自分は現地の人に受け入れてもらっている立場でそこにいさせてもらっているだけでありがたいことなんだと。
あのときの出会いがなければ、もしかしたら今のように気軽に旅をするようにはなっていなかったかもしれない。あのときの自分がその人に出会えてよかったと思う。