オンラインの会社説明会は、あまりにもキラキラとしすぎていた

大学3年生の私は、去年の夏頃に就職活動を始めた。
コロナ禍では説明会はもっぱらオンライン。合同説明会がある度に、とりあえず予約して、とりあえずZoomを立ち上げて、とりあえず話を聞いていた。
しかし、「とりあえず」聞いている説明が、どれもあまりにもキラキラとしすぎていた。

小学生の頃に読んでいた「ペギー・スー」というシリーズ小説に、魔法にかけられ砂になったセバスチャンという人物が出てくるのだが、社会人の人々の話を聞くたびに、彼の存在が記憶の奥底から引っ張り出されてきた。
彼は純粋な水がないと人間の姿に戻れない。私にとっての「純粋な水」は、就活のことなど考えなくても良い学生生活だと思った。

どうして自分は、消去法で就職先を決めようとしているのだろう

就活を後回しにしていたら、いつの間にか秋が過ぎ、冬になっていた。
このままでいると、なんとなく、自分のためにならない気がしてきて、私はまた、会社説明会に参加するようになっていった。
しかし、説明される仕事内容は、やっぱりすごくて、重たかった。何と言うか、自分に出来る気がしなかった。
「これは私には出来ないだろう、これも無理だ、これも向いてない」。どんどん、自分の中の「興味がある企業リスト」から企業名が消えていった。いつの間にか空っぽになったリストを見返せば見返すほど、自分には何もできない人間なんだという思いが強まり、私はまた、砂になろうとしていた。

よく布団の中で、どうして自分は消去法で就職先を決めようとしているのだろうと考えていた。そして毎回、「自分に自信がない」ということがネックになっているのだという結論に至った。

しかし、これまで20年以上生きてきて身につかなかった自己肯定感を、これから養える自信もない。そもそも何故自分に自信がないのかも分からない。
これまで、自分に絶望するほどの失敗をしたことはない。でも同時に、自分って素晴らしいと思えるほどの成功をしたこともない。むしろ、だからこそ、なのかもしれないが、良く分からない。
こんなことを、ぐるぐると考えながら寝ている日々が続いた。

「やってみたい」という気持ちで良い。これを忘れずに就活を続けていきたい

自分一人で考えていても、何もならないと感じ、就活サポートのチャット相談を利用することにした。
「会社説明を聞いていると、『自分にはできないな』と感じてしまい、消去法で企業を探してしまっています」。こんなことわざわざ送って、何になるのだろうか。「いや、頑張れよ」というだけの話ではないか。何だかすごく馬鹿らしい相談内容であるような気がした。
でも自分には重要な悩みだし、これを対面で相談できる気はしない。えいやっ、と送信ボタンを押し、すぐにパソコンから離れてひとまずトイレに行った。
返事はすぐに届いた。恐る恐る読んでみると、とてもシンプルな内容であった。
「仕事は最初からできませんし、学生からできることはほとんどないので、『この仕事をしたい!』という気持ちでいいですよ。自信もって!」

正直、想定内の返事ではあった。しかし、その文章を読んでいる自分は泣いていた。私は、自分の自信のなさに縛られる必要がなければ、自分の可能性を閉ざす必要もないんだと思った。
自分の心の中が満たされていくような気がした。自分を砂から戻す「純粋な水」は、「やってみたい」という自分の気持ちで、私はそれを自ら潰してしまっていたのだ。

2022年。春から4年生になり、就活も本格的に始まっていく。
別に、自分に自信がついた訳ではない。でも、考え方は変えられる。
「私にはできない」から、「私もやってみたい!」に。それだけで、あんなに眩しすぎて逃げ出したくなっていた企業たちが、私に向かって「おいでおいで」と手を振ってくれているように見えてきた。そして、何とも単純なことに、仕事内容だって、自分にも出来そうな気がしてきたのだ。
「やってみたい」で良い。これを忘れずに就活を続けていきたい。私の未来も、きっと明るい。