私は、高校受験に失敗し、第1志望の高校に行くことができなかった。
私の地元では、公立高校を本命とする人のほとんどが私立高校を滑り止めとして受験する。
私も例外なく私立高校を滑り止めで受験し、結果的にその高校へ行くこととなった。
その私立高校は母の母校でもあった。

優等生だった私が味わった初めての失敗。現実は甘くなかった

少し自慢っぽくなってしまうが、私は中学生までいわゆる「優等生」だった。小学生の頃から勉強もそれなりにでき、運動も得意。委員会などの活動にも積極的に取り組み成績も悪くなかった。
そして、中学3年生になり受験シーズンとなった。滑り止めに受けた私立高校は無事に合格。残すのは、本命の公立高校だけだ。

公立高校の受験を終え、結果発表当日。4つ上の姉と一緒に結果を見に行った。貼り出されたたくさんの数字の中から自分の受験番号を探したが、なかった。不合格だった。
初めて、努力が報われなかったと思った。初めて、失敗を味わった。
経験したことがなかった大きな失敗。どうしたらいいか分からなくなった。

正直、テストはあまり手応えがなかった。受験前の実力テストの判定も、良くなかった。「もしかしたら落ちてるかも……」と思いつつも、「自分はちゃんとやってきた」という気持ちもあり、なんとなく大丈夫だろうと心のどこかで思っていた。

しかし、現実は甘くない。
今になれば、努力が報われなかったのではなく、単に努力が足りなかったと思えるが、当時の私はどうしていいか分からなくなった。
「受験くらいで」と言われるかもしれないが、それまで大きな失敗や挫折を経験したことがなく、姉や兄も公立高校に行っていたので落ち込むには十分だった。

このまま私立に行ってもいいのか。学力が下の公立の二次募集も考えた

どうしていいか分からなくなる理由は他にもあった。
私には双子の姉がおり、姉も公立高校の受験に失敗していたのだ。
公立高校に比べ私立高校はかなりお金がかかる。実家は貧乏ではないが裕福でもない。兄弟も多い。学校は別々だが、そんなところに2人揃っていくのかと思うと、親に申し訳なく思えた。

そんな申し訳なさと悔しさから、合否の発表から家に帰ると涙が溢れ出た。泣きながら、家から近い公立高校の二次募集を受験しようと考えていた。はっきり言って、その学校はあまり評判が良くなかった。学力は県内でも下の方、二次募集するほど定員割れしていた。だが、お金のことを考えると仕方ない。

母は私立校に「行く意味」を教えてくれた。母の言葉に何度も救われた

4つ上の姉に慰められながら、二次募集を受験すると言うと姉は「そんなこと考えなくていい。あんたは私立の方が合うと思うから私立に行っていい」と言ってくれた。少し気持ちが軽くなったが、でもまだお金のことが引っかかっていた。

遅れて帰ってきた母にもそのことを伝えると、母は「お金のことは気にしなくていいから私立に行きなさい」と姉と同じことを言ってくれ、続けて「あなたが行ってくれると、私も母校に行けるから嬉しいな」と言ってくれた。

その一言で私の心は一気に救われた。
「行っていい」ではなく、「行く意味」を教えてくれた母の言葉に。
母の本心だったのか慰めの言葉だったのかは分からないが、とにかく救われた。

その言葉のお陰で、私は高校生活を心から楽しむことができた。やりたい夢も見つけることができた。

あの時、公立高校に通っていたら。あの時、母の言葉がなかったら。
今でも、あの言葉には何度も救われている。