「忘れないでほしいのは……」。つらかった私に届いた恩師の言葉

私はこの人生、常に誰かを頼ってきた気がする。
人に甘えてばかりだし、人に助けられてきた。
ただ、本当に自分の人生がわからなくなったとき、私が頼ったのは高校の恩師だった。
恩師は1年と3年時の担任だった。自己紹介のときには、黒板いっぱいに自分の人生を書き連ねるのが定番で、それを私は気に入っていた。
それまで出会ってきた"先生"という生き物の人生は、未知でしかなかったからだ。
先生は上で、生徒は下。
少なからずそういう風に感じていた。
恩師は他の"先生"とは違って、生徒をひとりの人間として見てくれていたと思う。
受験の時は夜遅くまで一緒に残ってくれて、私が手を抜きそうになったときは真剣に叱ってくれた。
いつだって生徒をよく見ていた人だった。
だからこそ、大学入学を機に上京した私は、成人後の帰省で恩師と酒を交わすくらい、人として信頼を寄せていたのだ。
「社会人になったら、ボーナスを貰ってみなさい」とお酒の席で恩師は言った。その時の私は「ボーナスかぁ、欲しいなぁ」くらいの感覚だった。
その後、就活もギリギリ終わり、新卒で社会に出た瞬間、コロナ禍に巻き込まれた。
「こんなはずじゃなかったのに」と毎日思った。自分のやるべきことはしていても、何も変わらないことが多すぎて、精神が病みきっていた。
運の流れが何もかもダメだった。
そんな気持ちを書き連ねていた日々の中、私は文章で恩師への感謝と同時に助けを求めた。
また一緒にお酒を飲みたいこと。ボーナスを貰えていないこと。自分が生きていていいのかわからないこと。
今読み返すと、精神がギリギリの中で書いていた文章だった。
恩師は、すぐにたくさんの言葉で返事をくれた。
生きるということは、何かを得ると同時に何かを失う繰り返しであること。
大切なことは、自分が何をしたいかをしっかり持つこと。
もし何をしたいかわからないときは、考え続けること。
辛い経験も自分を豊かにすること。
その中で、ボーナスを貰う喜びも感じて欲しかったこと。
「忘れないでほしいのは、あなたは1人ではないということ」
恩師からの言葉に目を通しているだけで、今まで自分を縛りつけていたものが全部綺麗に消えたような感覚になった。
恩師の言葉たちは生涯自分を救ってくれるだろうし、いつまでも大切にしなければいけないものだと感じた。
不思議なことに、その日から少しずつ運の流れが変わっていき、安定した給料と落ち着いた生活に変わっていった。
先生、私は何とか生きています。
まだボーナスは貰えていないけれど、やりたい仕事がやっとできています。
毎日、自分の人生について考え続けています。
先生、また乾杯しましょう。
最近日本酒にハマってるんですよ。
美味しいお酒、奢ります。
先生、また会う日を楽しみに生きていきます。
それまでお元気で。
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