私の父親は現在、国内では割と有名な企業の関連会社で中間管理職をしている。
これまでの昇進は割とスムーズだったと聞いている。にもかかわらず、私はずっと、自分の家は貧乏であると思っていた。思い込んでいたと言った方が正しいのかもしれない。
両親の口癖は「お金がない」。私はいつも何かを我慢していた
「家はお金がないから……」。これが両親の口癖だった。
幼心に、私はいつも何かを我慢していた。本当は、欲しいものがいっぱいあった。友達がみんな持っていたおもちゃ。みんな持っている子供服ブランドの服。
でも、それに一切興味がない振りをして、私は実家を出る18歳まで過ごしてきた。
実は、家は貧乏ではないらしいと気づいたのは、自分でアルバイトをするようになってからのことだった。
「お金のことは気にしなくていいから、勉強を頑張りなさい」
今度はこれが親の口癖になった。
幸いにも、私は私立の大学に通わせてもらっている。そして、そこそこ便利な場所に下宿していた。決して家賃が安くはないマンションだった。
そこで私は何気なく、父親の会社名と役職名で検索をかけた。割と有名な企業なので、予想年収はすぐにヒットした。それが、平均年収よりもはるかに高いということもすぐに分かった。
わかった時の私は、それを隠していた親に対しての怒りでいっぱいだった。なんで、私はあんなに我慢してたんだろう……。
実は、実家は貧乏ではなかった。私にお金を渡さないのはなぜ?
それから、親と金銭的なやり取りをすることはあまりなくなった。しかし、親からの仕送りの額は少なく、私は毎月生活をするために身を削っている。
きっと親はある程度のお金を持っているはずなのに、どうして私には回ってこないんだろう。私の中は疑問でいっぱいだった。
もちろん、親にも言い分はあるだろう。「自分たちの将来のために貯金しているんだ」とか「家族旅行に行くために貯金しているんだ」とか。
それはわかるのだが、そのお金を少しでいいから娘に回してほしい。せめて、子ども時代、もっとわがままになりたかった。授業のノートがないことも、鉛筆がなくなったことも、教材が必要になったことも、もっと勉強したかったことも、全部言ってみればよかった。
だって、家はそんなに生活に苦しい訳ではなかったのだから。
私の怒りは時間とともに、疑問に変わっていった。そこまでして娘にお金を渡さない意図は一体何なのだろう?幼少期から、自分は貧乏だと思わされ、ずっとしなくてもいい我慢をしてきた子どもがどのように育つかを考えたりはしなかったのだろうか?
大学卒業まであと1年。自分の生活を自分でやりくりしていきたい
私は両親に怒りたいと思う。そして、その権利があると思う。でも、私はそうはしない。
私は春から大学4年生になる。来年の春には社会に出て、自分で生活をしていく。自分で稼いだお金なら、どんな風に使っても、文句は言われないだろう。親に腹を立てるよりも先に、自分の生活を自分でやりくりしていくことの方が先決だと考えたのだ。
お金に縛られて、あれこれと考えるのはもう1年間の辛抱だ。それさえ乗り越えれば、自分で自由にお金を使うことができる。
もちろん、その中でも我慢することは必要になるだろう。しかし、少なくとも子どもの頃のように、しなくてもいい我慢をする必要はなくなる。
両親に「貧乏」を刷り込まれた結果、私はお金にうるさい人間に育ってしまった。1円でも安いものをと探している。それが無駄だとわかっていても。そんな生活はやめたいと思っていても。
今は我慢して、将来の楽しみを待つ。今、私にできることはそれだけだ。