母は、私がまだ小さい頃、小学生くらいの頃から、私の目線に立ってアドバイスをくれる人だった。

専業主婦の母は、私が学校から家に帰ると、「どんなことがあった?」と学校であった話を必ず聞いてくれた。人間関係や宿題、習い事の悩みなど、なんでも話していた。
同性の兄弟がいない私の唯一、何でも話せる相談相手だった。あの時の私にとって、どんな相談をしても答えてくれた母親は、紛れもなく私にとって大人だった。

友達のように仲良しな私と母親。なんでも母親に相談していた

中学生から高校生になって思春期に入り、人間関係、特に恋愛で、より悩むようになったが、そういった繊細な内容の相談も母親に打ち明け続けた。
母親に相談すると、同級生に相談するよりも具体的で、一段上のアドバイスをくれる。それをそのまま実践したり、自分の意見のように同級生にアドバイスしたりすると、「さすがだね」「大人っぽいね」と言われるのでうれしかった。母は私に一方的に意見を押し付けるのではなく、私の意見も聞いてくれるので特に反抗期もなかった。

3者面談に行くと、担任の先生から必ず「とても仲良しですね」と驚かれた。
休日は同じ洋服屋に行って、一緒に試着室に入る。未熟な子どもと経験豊富な大人という関係性だった私と母の関係性は、友達のような関係性に変わっていった。

私は大学から実家を出て一人暮らしをしているので、母親と会う頻度自体は減ってしまったが、今でも母親とは仲がいい。2人で遊びに出かけたり、旅行に行ったりすることもある。

小さいもやもやを母親に感じるようになった。私は本音をしまい込んだ

ただ、今年で私も27歳。母親が私を産んだ歳になって、少しずつ考え方のすれ違いを感じることが増えてきた。

例えば、最近会うたびに「彼氏とはいつ結婚するの?」「子どもの顔が早く見たい」と言ってくる。
もちろん私も早く結婚はしたいけど、仕事だって楽しい。自分たちのペースで考えたいと言いたいけど、まだプロポーズをされていないことへの負け惜しみだと思われるんだろうなと思って言い返さないでいる。

他にも、自分で生計を立て始めて、母親と一緒に買いものに行って、欲しいものがあっても我慢することが多くなった。
「前までなら絶対買ってたのに、大人になったね」と言われて、「あなたは父親のお金で暮らしているから我慢しなくていいよね」と思ったが、ただの僻みだと自分でわかっているので言わない。

母親も数年前、子育てが落ち着いてパートの仕事を始めたが、趣味の延長のようなもので、給料は本当に少ない。そんな母親から仕事の愚痴を聞くと、「私の仕事のストレスと比べたら大したことがないでしょ」とか「やめても生活できるんだから、そんなにいやならやめたらいいのに」と思うが、心から出た本音をしまって「大変だね」と返せるようになった。

こんな、本当に小さいもやもやが胸の内に生まれ、それをしまい込むたびに、自分に嫌気がさしたし、どこか寂しい気持ちになった。

私の人生と母親の人生は別物。これからどんな関係性になるんだろう

別に自分が母親の経験値を追い越したとか、母親よりも大人になったとか、そう思っているわけではない。人生の先輩であることには変わりはないし、今でもいろんなことをサポートしてくれる。

ただ、私の人生は、母親が歩んだ人生とは全くの別物になっていくんだろうな、と思う。
分かり合えない部分が増えていった先に、私たちはどんな関係性になるんだろうか。私がもう少し先のライフステージに行ったらもやもやが落ち着く気もするし、落ち着かない気もする。

いつか、今を振り返って「あの時は子どもだった」って思う時が来るのかな。
そんなことを思いながら、今日も母親から来た仕事の愚痴のLINEに返信を打つ。