幼馴染みから突然のLINEで「100万円貸して」。その理由は…
「久しぶり、すごく最低なお願いするね。本当にごめんなんだけど、100万円貸して欲しい……」
これが、何年ぶりかにきた、幼馴染みからのLINEだった。
彼女は、保育園からの幼馴染みだった。
怖すぎて、動揺して、「ふつうにこわきわ」と誤字りながら返信するが、そんな誤字に触れず、彼女は、「ごめんね」だけ送ってきた。
「理由は?」とシンプルに返せば、「ホストの掛け」だという。そして、「10日までに返済しなければ、実家に請求が行き、勘当される」というのだ。
「掛け」とは「売り掛け」の略称で、「売り掛け」とは、客がホストクラブで使った代金をツケとして立て替えてくれるシステムのことだという。
彼女は200万以上のお金をホストのかけに使ったのだという。あと100万が足りなくて、どうにもならず幼馴染の私に泣きついてきたのだ。
どうしようもなさに頭を抱えた。あまりにも馬鹿すぎる。そして、そんなこと私に頼るな、いっそ勘当されろ、と憤りも覚えた。
コロナ禍で生活に苦しむ人々の姿は、フィクションではないのだ
私も大概性格悪いが、その内容をスクリーンショットし、他の友人に共有した。
当たり前だが、共有する先々で、「絶対に貸しちゃダメだよ!」「こんなこと言うの友達じゃないよ!」と止められた。
その通りだと思うし、私も貸すつもりはない。100万という金額は、しがないサラリーマンの私にとって、1年働き節約することでやっと貯まるか貯まらないかのお金だ。それをぽんっとは返せない。
20代半ばにもなってこんな説教させないでよと言いながら、彼女にもそう諭した。響いてるのかどうかはわからない。
200万以上のお金を刹那的にぱーっと使ってしまう彼女と私では、価値観が違いすぎる。私の説教など届かなかったのだろう。
彼女は自分の春を売って生活をしているという。コロナ禍で売れず、さらにホストの掛けに追われ数年ぶりに幼馴染に送ったLINEがあれだった。
夜の華やかな世界は、そんなお金の感覚も狂わせるのだろうか。
コロナで花も咲かせられず、生活に苦しむ人々の話はニュースの画面越しに見ていた。が、あれは、フィクションではなくその辺に転がっている現実なのだ。
本当は見ないで済んだであろう闇が、コロナのせいか浮き彫りになったように思う。
彼女は今、何を売って生きているのだろう。春はまだ来ない
結局のところ、私は彼女に30万ほど貸した。半年で返金するという約束のもとに。毎日のように「あなたしか頼れない」と泣きながら電話を寄越してくる姿に同情して、貸したのだ。
他にもあなただけしかいないとささやいていたのか、彼女はなんとか返金したらしい。
周りの友人からは「馬鹿だな」と言われた。「捨てたものだと思いなさいね」とまで言われた。全くその通りだと後悔しながら、笑った。
それが1年前だ。まだ10万ほど返ってきていない。逆に20万返ってきただけいい方かななんて思うくらいだ。
まだ冬は続いている。引きこもるしかない日々だ。今彼女が何を売って生きているのかは、何もわからない。
私はというと、あと5万は返してほしいなと思いながら、ベッドの中で春を待ちつつこのエッセイを書いたのだ。