高校3年生、人生で初めて“本命チョコ”と言えるものを人に渡す。
その人を好きになったのは高校1年生の時。部活が同じで一緒に活動するうちに好きになっていた。気づいたらその人を目で追っていて、一日中頭の片隅で考えるようになった。高校生ではありきたりな感じの恋の始まり方だと思う。
自信がない私は、好きな気持ちを隠してチョコを渡すことにした
当時の自分は、とてもではないが人に好かれるような見た目ではなかった。
顔はニキビだらけ、体重も高校生にして80kgを超えていて、髪型も服装も自分なりに気にしているつもりではあったけれど、センスというものは持ち合わせていなかった。
色々いっていればキリがないほどに今思えばひどいものだった。
さすがに自分が同級生よりはるかに太っているということや、あまり良い見た目ではないことは当時から……いや、中学生のころから理解していた。
こんな感じで、見た目に自信がない自分は今まで好きな人に本命チョコを渡すことなどできなかった。この時ももちろんそうだった。
そこで自分は、好きな気持ちをひそかにのせてチョコを渡すことにした。
同じ部活の女性の先輩が部活動の人たちに義理チョコを渡すと言っていたので、それを口実に自分も同じように部活動の人たちに渡した。
そうすれば必然的に好きな人にもチョコを渡せるから。好きという気持ちは言わず、勝手に気持ちを込めて。
そんなことをしたってその人に気持ちが伝わるわけではないし、相手からは、何とも思っていない人からの義理チョコとしか思われないことは分かっていた。
「自分の気持ちに気づいてくれるんじゃないか」と、あるわけもない淡い期待で胸を膨らませる。
そのたびに「そんなことあるわけないじゃん」と、勝手に落胆する。
今の自分から見れば、じつに幼くてかわいい。でもひどく哀れで惨め。
とてつもなく、苦いバレンタインである。
あれから2年、今年は恋人として彼に“本命チョコ”を渡す
あれから2年……。
高校3年生の自分は、そのとき好きだった人と付き合っている。付き合えたのは本当に最近のことだけれど。
この2年近くで彼に好きになってもらえる自分になりたい、そして自分が好きでいれる自分になりたいと、たくさんのことを頑張った。
約20kg減らしたダイエット、肌のお手入れ、自分にあう髪型や服装を探し、初めてのメイクにも挑戦した。
見た目が変わって少しだけ自信がつくと、気持ちも前向きになり学業やバイト、自分が苦手としていた、人とのコミュニケーションも自信を持ってできるようになった。人に「変わったね」「痩せたね」なんてことはよく言われるようになったけど、「○○ちゃん、変わったよね」と、彼に変化を気づいてもらえたことは何よりもうれしかった。
2年前、気持ちを伝えられずにいた女の子(自分)は大きな努力で変われたのだ。
まだ理想の自分にはほど遠いけれど、今年は恋人として彼に“本命チョコ”を渡すことができる。
「バレンタインはどんなチョコを渡そう」
「彼は喜んでくれるかな」
そんな期待がまた今日も胸を膨らませている。