小学生の頃は、中学校の勉強で躓かないように先取りで勉強を進め、部活動で活躍できるようにクラブ活動のリーダーを務めあげた。
中学生の頃は、いい高校に入るために勉強も部活動も生徒会も全力で取り組んだ。
高校生の頃は、いい大学に入るために受験勉強と部活動の両立に励んだ。
大学生の頃は、いい会社に就職するためにゼミ活動もアルバイトもボランティアも手広く取り組み様々な経験を積んだ。
そして努力の結晶である真っ黒な履歴書を抱え、教授も親戚も大喜びするような企業に就職することができた。
やっと長年の努力が報われたと喜んだのも束の間、私はなんだか全身から力が抜けてしまった。
努力が報われて就職できた後、なにを目的にしよう
さて、ここから何を目的に頑張ればいいのだろう。
今までは「次」のステップが明確だった。次の学校、次の環境が見えていて、次の私が苦労しないように、より良いステージに立てるように、そのために頑張ることができた。
就活が終わり新人研修を受け最優秀の成績表を手に本社に配属された瞬間、私は迷子になったかのような感覚に襲われた。
次はどこ?
次は何なの?
何のために頑張ればいいの?
昇給や昇格という制度はあるが、会社の慣習上それらはあくまで年次による変化であり、努力で変えられるものではなかった。
同期の中で一番多く電話をとっても、資料を綺麗に大量印刷して素早く綴じても、休日に読み漁ったビジネス書を参考にして丁寧な顧客対応をしても、一定の給料と一定のやりがい。
いつも「次」を見据えて頑張り続けてきた私は、仕事を始めることで人生で初めて「今」とちゃんと向き合うことになった。
今、私の目の前にあるのは何か。
仕事だ。
仕事をすると、誰かにありがとうと言ってもらえて社会に貢献でき、給料が貰えることで生活ができ、国民の三大義務のうち勤労の義務と納税の義務を果たすことができる。
次のためではなく、今、自分の目の前にある仕事が自分にとって何を意味するものなのか、真摯に考えて向き合い、そのために頑張るということ。
初めての感覚で、最初は少し慣れなかった。
キャリアアップを目指して転職サイトを見回したり、自分に合いそうな資格を調べて資料請求したり、ふと気づくと「次」を模索してしまう時もあった。
でもその度に、「まずは目の前の『今』を、誠実に、ひたむきに、頑張ってみよう。『次』はそれからでいい」と思い直した。
「今」を大切にしたら仕事も感情も豊かに
昔をふりかえると、私はずっと「今」を蔑ろにしてきた。本当はもっと同じクラスの人達とじっくりお喋りしたり、図書室で受験勉強に関係ない本を読んだり、放課後の校庭でのびのびと遊んでみたかった。
その当時は「将来へ直接的に役立たない無駄なもの」と切り捨て、むしろ少し馬鹿にすらしていた時間の使い方を、本当は心の奥底でずっと欲していた。もう二度と戻れない「今」を、私は軽視し過ぎていたようだ。
あの頃、先を急いでばかりではなくもう少し自分の置かれた環境と向き合っていたら、また違う未来が待っていたのだろうか。
いや、過去を悔やんでも仕方がない。仕事のおかげで私は変化しようと思い立つことができた。
これから、「今」を大切にしていこう。
気持ちを新たに、目の前の「今」を見つめて頑張り続けるようになったことで、同じ「今」を見つめて仕事を頑張る周囲との信頼関係を築くことができるようになってきた。今までにない「自分と同じ情熱と志を持った仕事仲間」は、次第に私にとって大きな存在となっていた。
その変化は、その後の私の重大ライフイベントである出産・育児にとても役立ってくれた。
急な体調不良や突然の長期入院や復帰明けの突発的な休みでも、居場所を失わず寛容に受け入れて協力してもらえたことは、会社の福利厚生や先例のおかげであるのは大前提であるが、あの時まだ見えもしない幻想の「次」に目移りせず目の前の「今」と真摯に向き合っていたことが結果的にこの「次」に繋がってくれていたこともあるだろう。
私が仲間に助けてもらった分、これから仲間に何かあった際は今度は私が全力で助けると心に誓っている。それがたとえ一見「次」へ直接的に役立ちそうになくてもだ。
強くなった私は対応順応力で生きていきたい
仕事を始めることで、私は自分の視野がまだまだ狭いことに気づかされた。何が「次」へ役立つかなんて、見えるつもりでいても全然見えていない。
決めつけすぎず、打算的にならず、ひたむきに「今」と向き合う。きっとそれは、総じて何かしら「次」へ繋がっているのだろう。
仕事のおかげで、私は頑張る理由を改めることができた。
将来を見据えることは勿論大切だけど、安易にまだ見ぬ「次」のために頑張る快感に惑わされず、まずは目の前の「今」と真摯に向き合い、そこから頑張る動機を見つけること。
仕事を始めるまでは一切思いつかなかったこの感覚が、今の私を形作っている。
仕事を続けていく中で、私は今後も何か変化していくのかもしれない。
そうなったら、その度にきちんと「今」の自分の感覚と丁寧に向き合い、試行錯誤しながら少しずつ慣れて、変化していけばいい。
日々変化し続ける社会のなかで、変わらぬ情熱を持って仕事に取り組み、自分自身を進化させていこう。