東京にさえ行けば、充実した毎日を送れるものだと思い描いていた

私が育ったのは、中部地方の山々に囲まれた田舎。友達と映画を見に行くにも、プリクラを撮ったりボーリングをしに行くにも、1時間に1本の電車に乗らなければならない。
その電車に乗る駅に行くのも一苦労。駅までの片道5キロは車で親に送迎してもらうほかなかった。
そんな場所で過ごした中学生時代、1番手軽な娯楽がテレビドラマ鑑賞だった。

特に好きなのが働く女性が主人公のドラマ。都心でバリバリ働くヒロイン。そのほとんどがアラサー(15年前はそんな言葉使ってなかった気がする)。
当時の私は、①東京に住んで東京で働く(寝ても覚めても口を開けば「東京に行く」と言っていた)、②バリバリ働く!目指せ、キャリアウーマン!③雑誌の編集とかできたらいいなぁ、④紙切れ1枚に振り回されてたまるか!結婚なんてしない!自立した女!が主な将来の夢だった。

東京で夢中になれる仕事をして、会社帰りや休日には気の置けない友人と飲みに行ったり彼氏とデートをしたり……東京にさえ行けば、充実した毎日を自然に送れるものだと、2、3度行っただけの東京での生活に思いを馳せた。
その一方でそんな未来はずーっと先で、「本当に30歳になることなんてあるのか?」という感覚で生きていた。

中学の頃の夢は7割達成。でも現実は甘くない

でも日々はグラデーションのように進んで行く。まだまだ子供だと思っていたら、気がつけば十分に大人と呼べる年齢になってしまった。気分は浦島太郎。

現在29歳。立派な大人だ。
中学生の頃の夢の達成具合は、①東京に住んで東京で働く→達成。東京の中心部で働き、日々駆けずり回っている。②バリバリ働く!目指せ、キャリアウーマン!→バリバリとは言わないけど、まぁまぁ仕事中心の生活。来年度から少しだけ昇進。このままキャリアを積むかは迷い中。③ファッション誌の編集とかできたらいいなぁ。→全く違う業界、業種。挑戦すらしなかったことを少し後悔中。だけど今の仕事もなかなか充実感はある。④結婚なんてしない→奇しくも独身謳歌中。ちょっと結婚願望が出てきたり引っ込んだり。
こんな感じで、7割ほどは達成している。

でも思い描いていた「大人」になっているかと聞かれると、またそれもちょっと違う気がする。
まず住んでいる一人暮らしの部屋のサイズ。ドラマのヒロインが住んでいたのは綺麗なマンションの1LDK。現在私が住んでいるのは、築20年の1Kアパート。
年収は同世代の女性の平均を上回っているはずなのに、ヒロインたちが住んでいたような素敵なマンションなんて家賃が高すぎて手が出ない。中学生の私が、タイムマシーンにでも乗って今の私の部屋を覗きにきたら、多分がっくり肩を落とし、そんな未来に絶望するだろう。

今となってはドラマに描かれるヒロインの生活なんて視聴率を上げるために煌びやかに演出されたものだということは、東京で生活していくうちに理解した。
あんなに毎日外食したりコンビニ弁当を食べて生活をしてるのに、身につけているのは高そうな服やアクセサリー。そんな生活、3ヶ月で破産してしまう。現実はそう甘くない。

この先の人生への楽しみになったり、不安や心配が上回ったり

自炊中心の食生活と毎日同じような服を着回す日々。仕事ではドラマのように、朝、駅で前を歩く人が落としたものを拾って渡したら、落とし主が実は商談相手だった、とかプレゼン中に資料が手元になくて大ピンチ!!なんて時に、異性の同期がタイミングよく資料を持って飛び込んでくるなんて都合のいいことは起きない。
チャンスは必死に手を伸ばさないと、かすめもしないし、大体のことは自分でなんとかする道を探すしかない。

私は今、アラフィフの女性2人がやっているポッドキャストにハマっている。次に行き着く予定の「大人」だ。
日常のくだらない話、推しの話、仕事の話、セクシャリティーの話……2人いわく、私の人生はまだまだ序の口らしい。29歳まで酸いも甘いもさまざま経験した気になっているけど、この先も色々ありそうだ。
この先の人生が楽しみになっていく……嘘。そんな経験はしたくない……と思う話題もある。なんなら不安とか心配の方が、楽しみを上回ることが多い。

でも、2人のキャキャと喋る放送を聞くと「私もこんな元気なアラフィフになれたらな」と思う。
虚構と現実の狭間で、「思ったのと違う」と思い悩みながら大人になっていくのも、そう悪くはない。