弱った心にエンジンをかける。私の人生を何度も救う一枚のハガキ

机の上には散らかった履歴書のゴミ。
現在25歳の私は、仕事探しに翻弄される日々を送っている。特別なスキルもなければ、大した職歴もない人間の仕事探しは前途多難で、思うようにいかない日々が続いている。

不安な日々に怖くなって、全てを投げ出したくなる日もあるのだが、目の前にあるのは私の人生で、解決しなければいけない現実が広がっている。
弱った心にエンジンをかけるため、私は机の中から一枚のハガキを取り出した。
このハガキは、高校時代に学校の校長先生が私に宛てて書いてくれたハガキである。そして、私の人生を何度も救ってくれた大事なアイテムでもある。

ハガキとの出会いは高校3年生の頃。
この頃の私は、自分の存在を受け入れることができずに悩んでいた。
内気で友達が少なく、勉強や運動も苦手。周りと比べては劣っている……。
そうやって自分を下げてしまうことも少なくなかった。目立ちたいわけではないのだけれど、個性の強いクラスの中では埋もれてしまうような気がして、誰かに少しでもいいから自分のことを認めてもらいたい。
そんな、誰にも言えない悩みを抱えていた。

そんな時に届いた先生からのハガキ。
校長先生はとても生徒思いな先生で、生徒が誕生日を迎えると、毎年のようにバースデーカードをプレゼントしてくれるような先生だった。

直筆で書かれたおめでとうの言葉と、一言が添えられたハガキを先生は手渡しで渡してくれた。先生からの粋なプレゼントは私の毎年の楽しみであり、高校生活最後に受けた3枚目のバースデーカードは、私を悩みの中から救い出してくれたのだ。

自分に誇りを持ちなさい。そう語りかける言葉に救われる

先生からの3枚目のハガキには、「あなたの雰囲気は貴重です」そんな一言が添えられていた。
人と比べて何の取り柄もない。
そう思っていた高校生の私は、この言葉に自分の存在を肯定してもらえたような気がしたのだ。

あれから数年、度々手に取ってきたハガキは少しずつボロボロになっていく。ハガキについたシワを見るたびにこれまで悩んできた過去の自分を思い出すのだ。
仕事、友達、恋愛、自分のこと。
生きていれば、悩みは尽きなくて、何度も立ち止まりながら歩んできた。
25歳の今だって悩みの真っ只中にいる。
「仕事も恋も空っぽだー」
夜な夜な一人、お酒片手に嘆く日だってある。
悩みから解放されたくて、社会に対する怖さから逃げ出したくて、自己啓発本を読み漁ってみたり、ネットから「辛い時にひらく言葉」そんな文言のサイトを引き出してみたが、私の中から怖さは消えていかなかった。

本当に苦しい時、勇気をもらうのはいつも先生からの言葉だ。
自分が自分でいることに誇りを持ちなさい。
つまずくたびに、そう言われているような気がするのだ。

どんなに歩みが遅くても。涙を流しても。私は誇りを持って生きていく

今、先生はどこで何をしているのだろうか。
『もし今あなたに会えたなら』
このエッセイのテーマが目に入った時、真っ先に浮かんだのが先生の姿だった。

17歳の私が経験した出会いは、特別なものであり、あの時の出会いが今の自分の力になってくれていることを思うと、自然と感謝の気持ちが湧いてくる。
もし、もう一度会えるのなら高校生の時に私のいいところを見つけ出してくれたこと、人生を何度も救ってもらったことをちゃんと言葉にしてお礼を伝えたいと思う。

一息ついたら気持ちを立て直そう。今の私には向かっていかなければならない現実がある。
2ヶ月間のニート生活で、体の重みは増し、動きはだいぶ鈍いのだが、ハガキに力をもらった私はすっかり前を向いている。どんなに歩みが遅くても、世の中の厳しさに大粒の涙を流したとしても、今は踏み出すことを諦めたくない。
私は私であることに誇りを持って生きていこう。