物持ちが良いと言われる私は、部屋の中に捨てられないものがたくさんある。
服なんて、中には15年着ているものもある。
そして思い出も捨てられずにいるものが、たくさんある。
思い出が物語るもの、その中の一つであるずっと捨てられないもの、それは、プリクラだ。
10年ぶりに友達と再会。私の手紙を取っておいてくれたらしい
ゲームセンターや女の子が集まる商業施設には必ずといって良いほどあるプリクラの機械(略してプリ機)。
しかも、1台どころではなく、複数台ある。
全て違う種類だ。どの機械がどう他と違うのかイマイチわからない。
流行りのプリ機には、女の子たちが列を作っている。時に、パートナーらしき人を連れて。
流行りのプリ機が今はどのようなものかわからない。
昨年、約10年ぶりに高校時代の友達に会った。最後に会ったのは、高校の卒業式だ。
それ以降、友達と時々連絡は取っていたが、会うことはしなかった。
それが、向こうからの声かけによって会うことになった。
私が10年ほど前に渡した手紙を未だに捨てずに取っておいていたらしい。それで「元気にしているかな?」と思ったそうだ。
友達が私としたいのは、最後に会った時のようにプリクラを撮ること
私たちは、永田町でランチをした。友達が行ったことがあるカフェに連れて行ってもらった。
そして一息ついた時友達が言ったのだ。
「マナマナとしたいことがあるんだけど?」
「何?」
「マナマナとプリクラが撮りたいの!」
「プリクラ?」
「最後に会った時、卒業式終わり、プリクラ撮ったじゃん?だからまた撮りたくて……」
友達は、あの日、卒業式の日の思い出も捨てずにとって置いていたらしい。もちろん、プリクラも。
手紙も思い出もプリクラも、友達は大切に保管していた。
私ももちろんプリクラは取ってある。部屋の片付けをする時、目にした。ずっと捨てずにある。何気に捨てることができないものだ。
しかし、友達のように思い出と共にプリクラを保管していた訳ではなかった。プリクラを撮った時の服装は、確かに卒業式の服だが、だからといって特別な気持ちはなく、ただ撮ったな、と思うくらいだった。
友達がそこまで思い出と一緒に捨てずに保管していたことに驚いてしまった。
手紙を渡したことさえ、私は忘れていたのだから。
「プリクラいいね!また撮ろうか!」
私は、友達の提案を受け入れた。
永田町にプリ機があるなんて聞いたことはなかったので、プリ機がある電車1本で行ける場所をスマホで探した。
結果、後楽園。後楽園には、東京ドームシティがある。ゲームセンターがあり、そこにプリ機があるのだ。
はしゃぎながらプリクラ撮影。これも捨てられない思い出になる
東京ドームシティに行くと、若い女の子たちがたくさんいた。私たちは27歳、女の子たちはまだ10代だろうか?
女の子たちに紛れて、プリ機を選ぶ。
「どれが良い?」
「どれも一緒じゃん?」
「ナチュラルめが良いよね」
そんな会話をしていた。
10代の子たちと同じような会話だ。私たちも10代に戻ったかのように。
久しぶりのプリクラを、はしゃぎながら撮った。
はしゃぎ方がアラサーとは思えない。笑えるほどに。
部屋に入り機械をいじる。
背景が突然動きだし、2人で驚く。
相変わらず撮影のタイマーとシートへの落書きのタイマーには焦らされた。
落書きはセンスが問われる。
私は自分で言うのもなんだが、落書きは得意だった。友達は苦手だった。しかし、それも思い出。
出てきたプリクラの私たちは、宇宙人のように目が大きかった。
本当の私たちとまるで別人。
それでも笑いながら一つの思い出をまた作った。
この思い出もきっと、捨てられない思い出になるのだろう。
プリクラは時間が経つと色が褪せて消えていく。しかし何故か捨てることができない。思い出もまた捨てられずにいる。
またその友達とお出掛けすることがあれば、今度は私から「プリクラ撮ろう!」と誘いたい。
また捨てられない思い出を作っていくのだ。