14年前の春。中学2年生の私は、いつものように家から駅まで、父に車で送ってもらっていた。
明確に覚えている。いつも駅に着くまでの数分間は眠っていて、その日もうとうととしていた。その時、ラジオから聞こえてきた声に、ハッとなって目が覚めた。
なんて力のある声なんだろう。その曲を最後まで聴き終えて、ラジオDJが言うその歌手の名前と曲名を耳を凝らして聞きとめた。
「Superflyの『愛を込めて花束を』」
そして携帯のメモ帳に急いで書き込んだ。
いつもそばにあったSuperflyの音楽。留学中は母のそばにも
中学2年生。いわゆる厨二病が発症されるお年頃の私は、それからの日常が一気にロックとブルースとヒッピーに染まっていった。
彼女のコンサートに行くことが叶ったのも、割とそれからすぐだった気がする。確か、2008年のコンサートツアーのアンコール公演だった。どこかにチケットを貼って残してあるのだが見つけられず、さすがに日にちまでは覚えていないけれど、確か部活の先輩に「チケットが1枚余った」と連れていってもらったのだ。
その時に特に感動したのは、『嘘とロマンス』という曲の歌い出し。気分も調子も良かったのか、彼女はオクターブ上で歌い始めた。コンサートならではのその臨場感は、強烈に私の心に刺さった。
ファンクラブに入会していたのも2年ほどで、高校生になってからは受験に忙しくなり、Superflyの活動を追いかけることはなくなってしまったけれど、それでもアルバムが出ると毎回購入していた。
だから彼女の歌声は、常にそばにあった。留学前も、お金の捻出のために売ったり、もしものことがあった時のために荷物を片付けている時に、それらのCDも売ってしまおうとしたけれど、母が「あなたが留学してる時に、あなたを想いながら聴きたいから残しておいて」と言われたので、手元に残ることになった。
母は『On Your Side』という曲を、留学中の私を想って聴いていたそうだ。
留学直前の2019年の7月。Superflyに出会ったラジオ局が主催する音楽フェスのチケットを奇跡的に入手し、留学前に最後に、久しぶりにSuperflyの姿を見ることができた。その直前に発売された『Ambitious』という曲を、彼女は歌った。
大きな生活の変化を前に臆病になっていた私にとって、この歌詞がとても沁みた。この小さな私に何ができるのだろう。彼女の歌声が、そっと背中を押してくれているようだった。
13歳で聴いていた音楽に、27歳の私がまた救われた
2022年の春。去年、留学を途中で引き上げて帰国し、崩していた体調はずいぶん安定するようになった。
4月4日、Superflyはデビュー15周年を迎えた。
先日、出産を控えたSuperflyの越智志帆さんが、テレビに出演しているのを見た。その番組の中で見る彼女はとても落ち着いていて、とても幸せそうだった。
そしてその番組の中で、デビュー曲『ハロー・ハロー』を歌った。彼女は「なぜか節目にしか歌いたいと思わなくて……」というようなことを、歌う直前に語っていた。
私は別段この曲にそこまでの思い入れはなかったけれど、今回改めて今の彼女が歌うこの曲を聴いて、今の私も同じように節目を迎えていることを実感した。
13歳の私が染められた音楽に、27歳の私がまた救われることがある。留学前に手放さなくて良かった。
今はきらいだけど、私は生きていかなければならない。ネガティブな昨日にさよならして、明日に行かなくちゃいけない。そうだ、ここから全てが始まるんだ。