私の今までの人生において、忘れたくないこととは何だろうと考えていた矢先に、先日忘れたくないことが起きた。

私は四月から、小学校の三年生のクラスで非常勤の教育指導員として働いている。
教育指導員とは担任の先生の補助で、授業中に姿勢が悪い子や進度が遅れている子の支援をする仕事である。友達の子どもはまだ皆小さいので、小学生と触れ合うのは人生初であるが、中々可愛いなと毎日感じている。

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私は三人姉妹の末っ子で、今までの職場がほぼ全員年上ということもあり、年上と接するのはまあまあ得意だと自負していたが、小学生は未知の領域だったので最初は不安であった。しかし、そんな不安を吹き飛ばしてくれる勢いで初日から児童がぐいぐい話しかけてきてくれて、子どもの凄さを思い知った。

子どもって本当に純粋で純朴で素直で正直。目がキラキラしてるのって本当なんだと感じた。今まで大人の世界の人間関係に揉まれ、汚い部分や嫌な部分をたくさん見てきた私にとって、こんなにもド正直な世界があったのかとビックリした。大人と違って人によって態度は変えないし、もちろん忖度もなし。それがたとえ担任の先生だったとしても。

喧嘩は日常茶飯事。誰ちゃんがなんて言った、言ってないの繰り返し。けど、不思議なことに泣き止むのも、仲直りするのもビックリするほど早い。さっきまで泣いてたじゃん、喧嘩してたじゃんと私はいつも心の中で突っ込んでいる。後に引かない、それが子どもの良いところでもある。

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私は今、もう一つの接客のバイトと掛け持ちしていて、更にそこでの従業員間の人間関係に悩んでいるので、余計に子どもたちのそのキラキラした純粋さが眩しくて羨ましい。私を含めて大人の人たちって、どこでその純粋さや正直さを失ってしまい、淀んだ目(失礼)をしてしまったのかと考える日もあるが、それが長年生きてきて色々な事を経験してきて社会に揉まれた証というならば、それはそれで仕方ないとも感じる。

そんな日々の中で、先日私にとって忘れたくないことが起きた。
それはいつも通りの昼休み。その日も児童たちは校庭で元気に遊んでいた。昼休みはいつも、鬼がどんどん増えていく増やし鬼で遊んでいる。
昼休みも残り五分となった時に、鬼役の一人の体格の良い男子が逃げ回っている小柄な男子を追いかけてきてタッチをした。その瞬間、勢い余って鬼役の男子が小柄な男子にぶつかって覆い被さってしまい、小柄な男子が頭を地面にぶつけ一気に泣き始めた。危ないと思った瞬間はもう遅かった。

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すると鬼役の男子は慌てて、頭をぶつけた男子に何度も何度も「ごめんね」と「大丈夫?」を繰り返した。私はとりあえず二人を校庭の端にあるベンチに連れていき、落ち着かせようとした。
しかし、落ち着かない。ぶつけた男子は静かに泣き、ぶつかった男子は謝りながらうずくまり、すごい勢いで泣き始めた。「ごめんね」を繰り返しながら大号泣をし始めた。
私はその勢いにビックリしつつ、こんなに誠意のこもった謝罪は今まで29年間生きてきて初めて目の当たりにしたので、ついもらい泣きしそうになってしまった。

幸いぶつけた男子の痛みはすぐに引き、保健室で安静にしながら頭を冷やす氷を貰い、落ち着いていた。一方、ぶつかった男子はベンチの横の地面でまだ号泣している。頭を打ったことから、「許されないことをした」と言いながら泣いているところをどうにか落ち着かせた。
丁度そのタイミングで昼休み終了のチャイムが鳴ったので、ぶつかった男子を促しながら教室に戻ろうとした。教室までの道に保健室があり、まだ保健室にいることを知ったぶつかった男子は走って保健室に行った。ぶつけた男子がもう元気そうな様子を見ると安心したかのように笑顔が戻り、二人ともそこからはいつも通りに戻った。

後にも先にもこんなに本気な謝罪はきっともうないだろう。
私の心に刻まれた昼休みとなった。