私は最近、よく最寄りの交番に電話をしている。
理由は、家の前の道路でスケートボードをする人がいるから。
スケートボードは車道や歩道ではやってはいけないというれっきとした法律が存在する。
公園とか、スケボー専用の施設でしか使っちゃいけないのだ。

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引っ越してきた当初からずっと、スケートボードの音に悩まされてきた。
ゴロゴロと滑るタイヤの音と何かしらの技の練習をしているガチャンガチャンという音の2タイプがいる。
昼夜問わず、うるさくてたまらない。
私はただでさえ寝つきが悪いのに、スケボーの音がうるさくて寝れなくなった。
翌日大事な仕事があるのに音が鳴りやまず、一睡もせずに臨んで結局仕事にならなかった日もあった。

派手に練習をしているところをキャッチしたある日、私はついに最寄りの交番に電話することにした。
しかし、おまわりさんが来る前に彼は練習を切り上げてしまい、逃がした。
ベランダからおまわりさんが現れるのを見ていた私は、彼の家が私の住まいと隣接していることを目撃してしまった。
その直後おまわりさんが到着し、私は家を出て「通報した者です」などと言いながらおまわりさんと話をしてしまった。
これが良くなかった。
一応、チクったと思われるから、離れたところで話すべきだった。

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その後何度か通報し、ついにおまわりさんが彼を発見した。
彼のほかにもう一人スケボーを1時間していた女性もいて、それも通報した。
やはり本人たちも後ろめたかったのだろう、私が散歩を装って様子を見にいくと、少し離れたところへ移動した。
そして、おまわりさんの自転車を目撃した瞬間、進行方向をくるりと変えて逃げようとしていた。
おまわりさん、最初は「お姉さん、止まってくださ~い」って言ってたけれど、彼女は無視してスピードを上げ続けていたから、ついに「おい!止まれ!!」と言われてようやく止まったという始末。

話のネタとして両親と祖父母に電話で話してみると、私が注意された。
あなたは女の子なんだから。変に逆恨みされたら困る。何をされるかわからない。せめて同棲している彼氏がいる時に通報したほうがいい、などなど。
私は理解できなかった。
あっちが明らかに違法なことしているのに、どうしてこっちが遠慮しなきゃいけないの?
あっちだってやっちゃいけないってわかってる様子だよ?
誰がどう考えたって、私は間違えていない。
違法なことをしている人が悪いのに、どうして相手を尊重しなければならないのだろう。
それにほかにも迷惑している人もいるはずだ。
以前深夜までガチャンガチャンとやってたとき、どこかの誰かが「うるっせえええええ!!」と怒鳴っていた時もあったから。
気づいた私が通報して、彼らが違法なことをやめたら、多くの人にとってハッピーエンドですよね?

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だけど私は通報して以来、ビクビクしながら生活をしている。
周りに言われたように、何か嫌がらせをされるかもしれない。
怖い目に遭うことになるかもしれない。
だけど私はいろいろなことを学んだ。

まず私は女だということ。力が弱く、なめられるということを認識しなければならなかった。
昨今、世界中で性別やセクシャリティー、女性蔑視などについて様々な事件や議論があったけれど、それでも何万年も続く人体を冷静に考慮すると、やっぱり男性にはかなわない。
世界の最新の風潮があったとしても、弱いということは認めなければならない。
だから、自分が明らかに正義だとしても、女性として遠慮しなければならない。

そして何より、誰かの迷惑になるようなことは絶対にしてはいけないこと。
確かに家の前は平らなアスファルトで道幅は結構広いのに、車も人も自転車もあまり通らない。気持ちよく滑れそうだとは思う。
だけど、やっちゃいけないことはやっちゃいけないね。
私が大事な仕事を満足にできず泣くに泣けなかったことがあったように、どれだけ自分にとって好都合でバレないと思っても、少しの気のゆるみが誰かの大切なことをぶち壊すかもしれないのだ。

そして、おまわりさんは正義の味方になってくれるということ。
嫌がらずに何度も駆けつけてくれて、むしろ通報の感謝をしてくれた。
これが、私の忘れたくないことだ。
自分が女性であるということ。
正義を振りかざすのが、必ずしもいいこととは限らないこと。
ルールを守り、正義の味方がいるということを忘れずに生活していこう。