大学2年の11月半ばだった。
久しく動いていなかった高校3年のクラスLINE、当時クラスのリーダー役を務めていた女子からのメッセージ。
「みなさん久しぶり〜!突然なんだけど、年明けに同級会を企画しています。久しぶりにみんなに会いたいのでぜひ来てほしい〜!後日一人一人に出欠確認してくね〜〜」
すぐ、同じクラスだった別の友人から個人LINEが来る。彼女とは卒業後も仲が良く、ことあるごとに電話したり遊びに行ったりする仲だ。
「行く?行くよね?」
「いつものことながら圧がすごいな」と思いながら、
「悩んでる」
とだけ返信する。
すぐさま「え、年明け帰省してるでしょ?予定ないなら行こうよ」と来たので、そのLINEは開かずにバイトの準備を始めた。

◎          ◎

高校。
大嫌いだった。
毎日退屈で、早く卒業したいとしか思っていなかった。
なぜ毎朝早く起きて満員電車に揺られて、興味ない授業を受けなきゃいけないのか本気で分からない。
私が好きだった人と親友が付き合いだしたときは、結局可愛くてわがままな子が勝つんだと思って病んだ。
文化祭の準備は私を含む暇な文化部が汗水たらしてやっているのに、部活を終えた運動部が作業場にやってきて、さも作業していたかのように写真だけ撮って帰っていく光景。
嫌いだった理由を挙げたらキリがない。

しかし、時というものは不思議なものだ。今高校時代を思い返すと、あんなに嫌だった高校の楽しかった記憶よりも、笑ってしまう記憶ばかりが思い出される。
部室で人狼ゲームをして、将来について語り合ったこと。
学校終わりに友人とサイゼリヤのドリンクバーとミラノ風ドリアを頼んで、長時間恋バナしていたこと。
当時好きだった人と毎日のように電話をして寝落ちしていたこと。

部室の人狼ゲームは宅飲みに変わったし、サイゼリヤはお洒落なバルになった。
寝落ち通話をするほど恋焦がれる人はできなくなった。
やっぱり、あの無敵高校生時代には戻れないんだなあと感傷に浸る。

◎          ◎

でも、そんな時に「違う違う。私の高校生活はつまらなかったじゃないか」と当時の自分が語りかける。
高校生の頃の私は、未来の自分と、とある約束を交わしていた。
それは「思い出を美化しない」ということだ。  
過去のライフステージを美化してしまうことが人間のサガであると思っていた高校時代の私は、未来の自分に、
「楽しい思い出もあるのかもしれないけど、結局のところ高校はとんでもなくつまらなかった。絶対に思い出を美化しないで。同窓会なんかにも行かないで」
と念じていた。
そんな自分の約束を、楽しい思い出に浸る時にハッと思い出す。
そして、高校生の頃の自分を尊重してあげる。そして語りかける。
「そうだね。あなたは本当に毎日退屈でつまらなかったんだね。でも大丈夫。今私は毎日がすごく楽しいよ」

12月、同級会を企画する女子から連絡がくる。
「同級会、1/4に決まりました!来れるかな?」
「ごめん、その日行けないです!」
私はこのまま思い出を美化せず、10年後、20年後も、高校生の頃の思いをそのまま未来に渡していきたい。