「障害は気合いで治るもの」「お前には根性がない」「『普通』と違う人はなじられて当然」
全て、母に言われたものだ。昭和の価値観のまま否定されれば、私も感覚が徐々に麻痺していき、「痛い」と思うことは間違い、気のせい、と見逃すようになる。

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大人になり、社会に揉まれた今ならはっきりと言える。
「お前(母の価値観)はもう死んでいる」
母に北斗神拳、いや今なら無量空処を食らわせたい。死んだ価値観を現代にアップデートしてほしい。発達障害は気合いで治せるものじゃねーよクソババア。

初めて母に「クソババア」とはっきり言えたのは、実家を離れて母の着信を拒否して3年が経ち、直接私の家に来られた時だった。
「お前さえ障害持ってなきゃ医療費がかからない」と私のせいにした母が、「そんなに避けられるとママ悲しいよぉ」とドア越しに猫撫で声で話す。私に自殺を教唆しておいて、都合の良いクソババアだ。
障害を持つ私を産んだことによる世間からの目が怖いくせに、自分のせいと責め立てられたくないから私に責任を押しつけた。その罪を忘れたとは言わせない。

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もうすぐ参議院選挙が始まる。
各党の意見やマニフェストを調べたところ、与党である自民党としての意見は、同性婚、包括的性教育、夫婦別姓全てに反対。反対する人はすべて、母と同じかそれ以上の年齢の人。大体は男性で、反対する理由は保守的なものによるようだ。
まともな性教育を施さなかったから望まぬ妊娠に苦しむ女性が多いというのに、上の世代には「おろさず責任持って育てろ」と無責任な野次を飛ばす奴がいる。
そこでこの害悪なおっさん共が、母に重なって見えた。

自分たちの決議が事の発端なのに、自分のせいではないと言い張る。往生際が悪い。
昭和の価値観で令和の世に生きる私たちが生きれるはずがない。ゾンビのごとくこの世をうろつく屍が、まだ日本を我が天国として世を動かそうとしている。
日本はあいつらだけのものじゃない。他を蹴落として創る天国に価値などない。

発達障害は昔と比べて認知度が高まった一方、まだ理解された上での受け入れが少ない。特に自閉症は空気を読むことを苦手としているため、受け入れがたいのも仕方がない。
「お互いを理解し合って多様性を築く」ことがどれほど夢物語か。しかしそれを夢物語としたのも、上の世代による弊害だ。
「普通」と違う人は嘲笑の対象にしても構わない。人権など与えるな。そう決めつけたのは紛れもなく上の世代で、しわ寄せを受けている私たちはなんとか「多様性」を築き上げようと四苦八苦している。上の世代が、国民一人一人に尊厳があるという意識が根底からあればしない苦労だ。

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母の都合のいいように「普通」のフリをして、なんとか社会に生きようとした私の末路は、うつ病だ。何をしても、自分の中の母が「お前なんてどこに行っても溶け込めない」「所詮障害者なんだから身を弁えろ」と野次を飛ばしてくる。
うるさい、黙れ。そう叫んでも消えることはない。私の人生の時間を、母が止めている。そんな母の時間も止まっている。

上の世代からの圧力は、私に限った話ではない。決議一つで子どもを産むことや私立校に行かせることなど、人生の大きな決断が大きく揺れる。育児のために仕事に行こうにも、子育てを任せられる保育園がどこも満員で預けられない。保育園と保育士を増やすよう予算を増やせば解決できることを、法整備が進んでいないがために未だに問題視されている。
政治家の脳のOSはどれだけ古いのだろうか、今の法律の多くは令和の時代に見合わない。

上の世代に伝えたいことはただ一つ。
今は令和だぞ、明るい未来作りの邪魔してんじゃねえ。