皆さんは今までにどんな企みをしたことがあるだろうか?
両親のマグカップの位置を少し動かすというかわいい企みもあれば、麦茶の代わりに麺つゆを入れたというちょっとハードな企みもあるかもしれない。
でも私の企みはド定番だ。

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その企みとはすなわち……冷え冷えのドリンクを友達の首にピタッとすることである。
誰もがやったことがある企みかもしれない。
ピタッとやられた相手は「つめた~い!」というリアクションもあれば、「びっくりしたぁ!!!」と驚く場合もあるだろう。

この冷たいドリンクをピタッとする行為は、私にとって青春そのものに見えた。
とあるドリンクのCMで男女が仲良く冷えたドリンクで笑顔になっているのを見て、「いいなぁ……やってみたいなぁ……」という気持ちになってしまった。
私という人間はとても単純である。
「友達に冷え冷えドリンクをピタッとしたい!!青春をしたい!!!」と思ってしまったのだ。

そこで私の場合、普段大騒ぎをしている友達に冷え冷えドリンクをピタッとやったらどんな表情をするのか実験してみた。
その子は演劇部に所属しており、一度台本を読み始めると人が変わったようにシーンと静かになる。
「いつも大騒ぎなあの子を冷えピタするのは台本を読んでる時しかない!」と思った私はそっと教室を抜け出し、購買の自販機で冷え冷えの飲み物を買いに行った。

飲み物のチョイスはあの子が好きなファンタ。自販機で買ったのでファンタは冷え冷えだった。
「これを後ろからいきなり首にピタッとやられたらびっくりするだろうなぁ」という淡い期待を抱きながら教室へ戻った。

◎          ◎

でも、台本を読み終わっていたら元も子もない。教室の中へ入る前にチラッと中を確認した。
「よし。まだ台本を読んでる。今が絶好のチャンス!」と思った私は抜き足差し足忍び足でその子の背後まで近づいた。
どうか気づかないでくれ!という私の願いが通じたのか、友達は背後にいる私に全く気づかない。
遂に冷え冷えの飲み物を友達の首にピタッとやった時、「ひゃっ」という声が口からこぼれた。
これはドッキリ大成功なのでは!?と思った私は、友達のそばに行ってその表情を確認した。
友達と目が合う。怒ってはいないようだ。でもなんか様子がおかしい。
ピタッとしてから時間が経過しているのに、友達が微動だにしない。
「じゃーん!ドッキリだよ!驚いた?」と言ってもシーンとしている。
「ほら!Yちゃんの好きなファンタだよ!差し入れ!あげる!」と言っても何も言わない。
「……え?怒ってる?ごめんね!?そんなに嫌だった!?」と言ってもシーン……。
私だけが動いていて、時間が止まってるのか?と思ってしまうほど友達は動かない。
またピタッとやったら怒るかもしれないし、かといって何もしないのもやばいと思った私は必死に友達に話しかける。

何分経ったのかは覚えていない。
けれど友達がいきなり「あー、びっくりしたぁ」と大きく息をはいた。
「えっ?今?今更じゃない!?」と思わず突っ込んでしまったほどだ。
一方、友達は何もなかったかのように台本を読み始めた。
ファンタを持ちながらボーゼンとしている私に「それ飲んでいいの?」と聞き、ドリンクを渡すと「ありがとう」と言った。

あの固まっていた時間は一体何だったのか今でもわからないままだが、私の企みはうまくいったように思う。