私のたくらみ。何かあるか、と考えた時全然思いつかなかった。今回のテーマは書けそうにないな、と諦めかけた時、思い当たるものが一つあった。
あまりにも、日常的にそれをしていたから、なじみすぎていて、頭に浮かばなかったのだ。よく考えてみれば、それもまたたくらみの一つだなと気づいた。

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私は普段、マッチングアプリを使っているのだが、そこで知り合った人とのやりとりを文字起こししている。これだけ聞くと、意味が分からない人もいるだろう。
もう少し詳しく言うと、アプリの人と電話、もしくは実際に会った時の会話を文字起こししているのだ。まさか一字一句漏れることなくしているわけではない。録音しているわけでもあるまいし、さすがにそこまでの精度で再現することは人間の私には不可能だ。当然である。
元々、文章なりで何かを記録しておくことが好きな質で、学生の時も日記を書いたりしていた。ほとんど読み返すこともないのに。なんなら、読み返したところで、特に意味のあることも書いてはいないのに。日記などというのはそういうものだ。
そして、そういう意味のないひとりごとに近いことが、私は好きなのだ。読み返すと、その時のことが手にとるように思い出せる。それが良い。

アプリを始めたのは去年の秋だが、その時から文字起こしをしていたわけではなかった。始めたのは今年に入ってからである。最近の話だ。
アプリというのは、あくまでマッチングだけをしてくれるもので、そこから先はなんの担保もとれていない。様々な目的の人が混在するその場所で、たくさんの人とやりとりをし、会ったりして、私はあることに気づいた。それはアプリを通して、他人の人生を覗くことが出来るのが面白く、それが醍醐味の一つでもあるということだ。
ほんの少しでも誰かと関われば、その人の思考が見える。意見にアクセス出来る。その人が紡ぐ言葉にその人の生きざまが影響する。
そして、それを記録しておこうと私は思ったのだ。記録しなければ、忘れていくからだ。時間が経てば経つほどに。よっぽど印象に残っていること以外、思い出せない。
先程も書いたように、別にほとんど読み返したりするわけでもないのに記録するのは、忘れないためと、何かそれが役に立つかもしれないと思うからだ。
どんな風に、と思うだろう。赤の他人と話した内容の記録が、一体何に、と。

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私は、いつか文章を書く仕事がしたいと思っている。具体的に何の仕事かと問われたらそれは分からない。小説家なのか、ライターなのか、はたまたそれ以外か。文章を書く仕事、と一口に言っても様々あるだろうと思う。
ただ、いつかそういう仕事に就いた時、もしくは何か文章を書く機会があるとして、ネタとしてそれらの記録が生きてくると思うのだ。小説の人物のモデルにでもなるのか、それともエッセイの題材になるのか、そのあたりであろう。
芸人の方が作るネタ帳、そんな感じだ。
何もないところから文章を書くのはなかなか難しい。だが、ベースとなるものがあればだいぶ違う。
とにかくそういった理由で、私は文字起こしをしている。今のところ、日の目を見る予定はなさそうだが、いつか何かの場面で活躍してくれるのを夢見て、スマホにポチポチと入力している。