「いつも笑ってて毎日楽しそうで、悩みなんてなさそうだね」なんてよく言われる私だが、本当は小さい頃から泣き虫で、幼稚園の思い出といえば、ほとんどが泣いている出来事ばかりだったな、と昔を振り返る度に思う。
なにがそんなに悲しかったのか、どうしてそんなに辛かったのか、大人になった今となっては思い出せないけれど、毎年必ずと言っていいほど泣いていたある出来事を、アルバムを見返しながらふと思い出した。

私には1つ年上のとても仲が良い従姉妹がいる。
私は福島、彼女は新潟に住んでおり、会えるのは毎年夏休みと冬休みのみ。会える機会は少ないが、定期的に文通して近況報告などを頻繁にしていた。幼い頃は、彼女が叔母たちと一緒に我が家に泊まりに来るのが本当に本当に楽しみで、泊まりに来る日程が分かると、毎日カレンダーを見つめて過ごしていた。

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そして従姉妹に会える日。毎年なのだが、庭が見える部屋に居座り、従姉妹たちの車が来るのを朝からひたすら待っていた。何時間もただひたすらに、1人で今か今かと待ち続けていたのだ。
そして、見覚えのある車が我が家の庭に入ってくる。
「あー!来たー!やっと来たよー!」
台所で家事をする祖母に大きな声で叫ぶ。わかったわかった、と言いながら祖母がゆっくりと玄関に向かっていった。

「今年もよく来たね〜。疲れただろ。上がってゆっくり休め〜」
長距離運転を無事完走させた叔父に祖母が労いの言葉をかける。そんな中、叔母は車から荷物を下ろし、それを従姉妹も手伝っていた。
「ねぇねぇ!なにして遊ぶ?お風呂一緒に入る?お布団も一緒?」
着いて間もない従姉妹に興奮気味に質問攻めの私。半年ぶりに会えた従姉妹への思いが溢れ出していたのだろう。返事を待つ前に次から次へと言葉が飛び出てくる。
「もう、そんなに一気に言われたらわかんないよ!」
従姉妹は笑いながら私に視線を向けた。1つしか変わらないのに、なんだか大人に見えた瞬間だった。

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それから毎年約1週間ほど、従姉妹たちは我が家に滞在する。お墓参りや親戚への挨拶を済ませ、ゲームや追いかけっこ、ご飯作りのお手伝いなど、どこに行くにも何をするにも、常に2人一緒だった。
「なんか顔も似てるし歳も近いし、双子みたいだよね〜」と、叔母が微笑みながら私たち2人を見つめた。
会えない時間を埋めるように、寂しさを紛らわせるように、私たちはずっと2人で毎年のひとときを過ごしていた。

そして従姉妹たちが新潟へ帰る日。私は決まって泣くのだ。寂しくて悲しくて、次会えるまでの時が長すぎて、我慢できないと駄々をこねるのだ。
これにはみんなお手上げ。泣いている私を横目に、みんな黙々と帰り支度を進める。もちろん、従姉妹も。
「大丈夫、また会えるよ。手紙書くから我慢ね」
従姉妹が私に微笑むと、車はゆっくりと走り始めた。
車が見えなくなるまで呆然と立ち尽くし、心が空っぽになっていくのを感じていた。
ここらからまた季節が2つ変わるまで我慢しなきゃいけないかと思うと、半年先の未来がとても遠く遠く感じた。

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時は流れ、お互い進学と同時に関東にアパートを借り、季節関係なく会えるようになった。お互い社会人になり、従姉妹は結婚、今年可愛い女の子を出産した。
今でも会える日が待ち遠しくて、会う度に楽しくて、お別れするのは辛い。でも、昔と違うことがただ一つ。それは、私が別れ際に泣かなくなったこと。離れていても繋がっていると知ることができたから。

寂しさばかりを感じていた幼少期、目の前の会える日ばかりを楽しみにしていたが、今は違う。また会える次の時まで、自分も頑張ろうと心の底から思える。
次会う時は、もっと大人になった私を見てほしいから。