私は頭のいい親戚の中で、唯一の出来損ないだった。
ずっとそういう扱いをされてきたけど、出来損ないなんてひどい話だ。世間一般的に見ればそう悪くもないし、そもそも頭の良し悪しで人を判断するべきじゃない。それでも私をかばってくれた人を含め皆、私のことを下に見ていることがわかった。
結局出来で人を判断するから、勉強においては私は下だと判断されているし、皆私よりは上だから安心しているに過ぎないのだと、最近知った。
母はずっと前から知っていた。私も多分知っていたが、認めたくなかったから認めなかっただけだ。それが自分を苦しめているとも知らずに。
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祖母という大きな存在が亡くなって、母は大変だったと思う。それでも来てくれた祖母のきょうだいは、私の味方だった。この人たちは、私をちゃんと見てくれているのだとわかった。ずっと黙っているだけの弟も、いつも私を見て心配していたのだと、彼氏から聞いた。いつの間にか、弟は私より彼氏によく懐いていた。
そんな彼氏は非大卒。現場で経験を積んだ、典型的な「勉強は苦手だけど、仕事はできるやつ」だ。「誠実そうだから」というところを見て付き合った。しかしその前から、現場職の人と付き合おうと決めていた。職業を聞いて改めてこの人が良いと思った。
他の場ではそれなりに評価はされてきた私は、それでも自分に満足していなかった。ただ、疲れた。気詰まりだった。
私の能力しか見てないなって人からは、どんなに褒められたって何も嬉しくない。一方で、ちゃんと私の作品を好きになってくれる人からの声かけは、些細なことでもとても嬉しい。
でも肩書きがつくと、そういう声は届きにくくなる。男尊女卑の暴言も無くなったけど、何も良くなってないし、孤独だった。
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すっかり拗ねてタバコを探す私に、自分の分を差し出してくれた人がいる。初対面だが、私の作品が好きだと言ってくれたその人は、仕事帰りなのかつなぎを着ていた。
今時タバコも安くないのに、ライターも差し出してくれた。愚痴を垂れ流す私の横で、うんうんと話を聞いてくれた。そして「自分を大切にしてくれる人をみたらいい。ここにはいないかもしれないけど、絶対いる」と言ってくれた。
次の瞬間には妻子持ちだということが知れて、がっかりしたけれど、現場職だということを知り、私は今まであまり関わらなかった、現場職の人と付き合いたいと思うようになった。
彼氏と付き合い、その周りの人たちと関わるようになり、彼らが私の周りの大卒の人たちと違うのは、「頭より体を動かして生きていること」だと思った。経験がものを言う世界なので、頭がどんなによくたって仕方がない。それは仕事全般に言えるのかもしれないが、違うのは、誰一人のけものにしないこと。
一方私は、周りの人たちの口が上手すぎるのか、丸め込まれて、生きづらさを抱えていた。人より偉いとか偉くないとか、そんなことで物事を見る人が多かったんだろう。全員とも言わないが、ほとんどそうだった。
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彼氏と付き合って、気持ちのいい人たちとつながるようになった。それでも以前からの知人には「(非大卒の人で)大丈夫なの?」と言われるようになった。
たしかに世間一般的に、大卒の方が給料が高い傾向にある。しかしお金の心配ならいらない。私は超節約家の家庭で育ったから、常識的なお給料がもらえていれば生きていける。世間の平均年収って多すぎない?と思っているくらいだ。まったく問題はない。
それとも他の何か?「大学にも行かない人は野蛮」とか思ってる?まぁそこまで行かないにしても「大学に行けないのはかわいそう」とか「負け組」とか??横暴なのはその考えの方だろう。
たしかに彼の職場では工具が飛んだ。しかし私のところでも機材が飛んだ。殴られたことはお互いない。だから別に野蛮でもなんでもないし、本気で向き合っているからこそ、怒れるのだということもわかるようになった。
暴力を肯定するわけじゃないけれど、それを野蛮の一括りにするのもいかがなものか。最近は何かとうるさいので、そういうものも少なくなっているらしいが、人間が育つ機会が失われているような気もする。
打たなきゃわからないバカもいる。私たちもそうだ。それを矯正してくれたのは、こういう人たちだ。少しやりすぎではないかと思うこともあるけれど、全部を頭ごなしに否定したら、大切なものを失うのではないか。
それから、大学に行くことがプラスに働く人間ばかりじゃない。そのお金を使って専門学校で即戦力としての技術を身につけたり、世界一周旅行とか、他の経験をした方がよほど身になる人も多いはずだ。
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非大卒の何が悪い。勉強が得意でないことの何が問題か。これって所属とか容姿とか、全てにおいて言われて、皆が苦しんでいることなんじゃないか。そして自分は苦しんでいるわけではないって人たちも、そこにぶら下がっていないと不安で、そろそろ手も痺れてきているんじゃないか。
手を放してしまおう。案外私たちは飛べる。それなりに筋肉も体力もいるけど、息がつまることはないはずだ。
それでもそういうことで文句を言う人が多いから悩んだ。親友に相談したら「(相手は)中二なの?」と言われた。中二レベルだ。関わることはない。こんなことで悩む私も中二だ。そして「何もない私はダメなんだ」って否定しているのもまた、私自身だった。
ある日テレビに職人が出ていた。見た目には無頓着なんだという事が見てわかるおじさんだが、仕事については誇りを持って取り組んでいて、なんというか、いい顔だった。男前ってそもそも、こういうことなのかもしれない。
その仕事の大変さが、番組で紹介されている。その仕事を覚えるまで、ここを束ねる立場になるまで、そして今現在も、どれだけ苦労してきたかわからない。それが顔に現れているんだ。こういう人を目指そう。
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本質を追いかけるには、まずは一生懸命自分のすべきことをすること。だから溜まったやることを一つ一つ整理する。少しずつでも取り組んで、前に進む。
私たちにならできる。やろう。だってこのままじゃ苦しいじゃん。悩んでる暇があったら、どんどんやればいいんだ。
やらなきゃいけないことややりたいことなんて、本当は皆それぞれわかってるはず。それでも行き詰まったら、お笑いでも見て元気だそう。味方がいることを思い出そう。
大丈夫。周りの雑音もそのうち気にならなくなる。見栄も欲も捨てちゃおう。それは幸せで心穏やかな生活には、持って行けないよ。進もう。きっと素敵な未来が待ってる。