23年間生きてきて気づいたのだが、なんと私はかしこまることができない。苦手なのではなく、たいしたことしていないのに余計な動き多くない?と思い、かしこまる意味がわからずやらないのだ。
しかし、言葉通り受け取ると、どんな場面でも常識のない人として敬遠されてしまうため、いかに相手にばれず無駄なパフォーマンスをしないかを追求する必要がある。
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中学生から適度な塩梅を探っていた私は、今では相手の反応を確認することもなく、息をするように楽をしながら「私、きちんとしていますよ」パフォーマンスをすることができる。
なんだかもっともなことを言っている風だが、言い方を変えれば手を抜いているともいえる。世の中に数多くある努力の中でもやってよかった努力ベスト5くらいには入るだろう。なんていったって緊迫感のある場面でも、他の人の3割くらいの緊張感ですむのだからお得極まりない。
大学卒業までは、先生やその他知っている大人の前でしか手抜きかしこまりパフォーマンスを披露することがなかったのが、この能力が本領発揮される時が来た。就活だ。
新卒の就職活動こそ、かしこまる態度が求められる究極ではないか。
黒髪!白シャツ!大抵黒のリクルートスーツ!ヒール!品のよさそうな化粧!七三分けポニーテール!そして定型的な面接。これでもかというくらい暗黙の規定がある。慣れていないからこその不自然な敬語を使い、動作・言葉遣いどれをとっても気が抜けない。
もちろん私もこれらの暗黙のルールは知っていたし、就活をなめてもいなかった。ただこのルールを完璧に守るつもりもなかった。私の頭の中は、どの部分で手を抜けるかなあ(人事に違和感をもたれない程度に)という考えが8割占めていた。
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追い風だったのがオンラインでの面接だ。最終面接以外は基本的にオンラインだったので、この状況ならば8割は手を抜ける!と1人で小躍りしていた。
その結果、私のオンライン面接スタイルはこうなった。
ぎりぎりまで寝ていたかったので、面接15分前に飛び起きる。
急いで水で顔をバシャバシャ洗う。1分で眉毛をかく。ビューラーでまつ毛をあげる。ちなみにまつ毛が上がっていてもいなくてもどちらでもいい。やったという事実が自己満足になっているだけだ。
歯を磨く。歯を磨きながらその辺を早歩きして頭を睡眠モードから脱出させる。歯磨きが終わったらコップ一杯の水を飲みほす。
自室へ行き、パソコンを起動。起動させている間に白いシャツだけ着。黒いジャケットはサイズが小さく不快なので着ない(下はパジャマのまま)。
急いで髪の毛を一つに束ねる(私は強めの天然パーマのため、仕上がりはふわふわ)。面接用のURLをクリックする直前に薄いピンクのリップを塗りたくる。何食わぬ顔で面接官に挨拶をして終わりだ。
清潔感と笑顔、そして敬語さえ使っていれば細かい所は気にならないものだ。白いシャツを着ていれば清潔感は出るし、リップさえ気持ち濃いめに塗っておけば化粧している感はでる。エントリーシートを暗記するのではなく、ちょっくら年上の人とおしゃべりしに来た程度のテンションで会話をした。実際、髪形や服装、言葉遣いに対しての注意を受けたことはなかった。どうやら最低限はクリアしていたらしく、むしろ笑顔とラフさで好印象を与えることが多かった。
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ちなみに、現在私が働いている会社は、面接はスーツでなくてかまいませんと伝えてくれていたので白いTシャツで様子を見た。面接官の雰囲気から、これは普段私が着ているような私服でも行けそうだなと判断し、最終面接は黒いパンツ、青が基調の古着の柄シャツ、5センチ以上の厚底Dr.Martensで臨んだ(きちんとした場だから、念のためパンツだけは黒にしておこうという意識はかろうじて働いた)。髪形も天然パーマを最大限に活かし、くるくるの髪の毛をオイルとバームを使って濡れ感を出すスタイリングをした。
はたから見れば、最終面接に臨む人には絶対に見られないだろう。そんな私でも受け入れてくれたので、現在は気張ることなく素のまま働けている。
私のパフォーマンスに騙されなかった人もいるかもしれない。あの子きちんとしていないからうちの会社は向いていないなと判断されて落とされていた可能性もある。しかし、私の頑張れるラインで面接に臨んでいたので、それを受け入れ可能範囲である会社は次へ進ませていてくれた。
結果的に、最低限頑張れるスタイルで就活をしたことで、本当に自分と相性が良い企業を見つけることができた。というよりは選んでもらえた。
かしこまらない手抜き技術は自分を守る術でもあるから、これからさらに大人になっていってもやめる気はない。