大学1年生の夏、バイト先で出会った彼と結ばれてからずっと、長い時間を一緒に過ごしてきた。
二人とも地元を出て一人暮らし。偶然家も近くだったので、よくお互いの家を行き来していた。大学は別々だったけど、授業終わりにスーパーで待ち合わせして、一緒に夜ご飯の買い出しをしたり、夜中にコンビニにアイスを買いに行ったり、近くの海沿いをよく散歩したりもした。
私の大学時代の思い出のほとんどが、彼と過ごした時間だった。その時間は、今思い出しても本当に楽しくて、幸せな時間だったと思う。
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そんな彼と、私は別れた。社会人2年目の夏、二人で話して、そう決めた。
一緒に居ることに慣れてきて、心が少しづつ離れていることは何となく感じていた。それでも私は、彼が横に居ることがあたりまえで、離れることを想像していなかった。喧嘩して、傷つけ合いながらも、お互いに好きという気持ちは変わらないと思っていた。でも、私が考えていたことと、彼が考えていたことは、少し違っていたみたい。
彼と別れることになっても、正直実感が湧かなかった。最後に彼が駅の階段を下りていく時、振り返って手を振ってくれた。でも、本当に明日からもう会わないのか、私にはよくわからなかった。
別れたら、すごく落ち込んだり、一人の寂しさに苦しくなったりするのかなと思っていたけど、そんなことも無かった。私は彼のことが本当に好きだったのかと、自分を疑ってしまうくらい、自然に一人の生活を送っていた。
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別れてから3か月経った今、気づいたこと。それは、私はやっぱり、ちゃんと彼のことが好きだったということ。
別れてすぐ、二人で撮った写真を消そうと思った。でも、できなかった。私の中で、楽しかった思い出は変わらない。それを無かったことにすることは、できないと思った。
写真を見ると、楽しかった時間を思い出して懐かしく思うこともあったけど、別れようと話した時の、彼に対する不満とか怒りとか、マイナスな感情も思い出した。自分では平気だと思っていたけど、気づかないところで、やっぱり苦しかったのかなと思う。自分を保つために、苦しさに気付かないようにしていたのかもしれない。
そんな写真を、私はスマホから消した。何がきっかけということではないけれど、急に思い立って、夜中に一人スマホのアルバムを開いて、二人で撮った写真を全部消した。
よく、時間が解決してくれると言うけれど、本当にそうだと思う。近くにある時には気づけないものに、離れてみると気付くみたいに。一緒に居た頃は、本気で彼が運命の人だと思っていた。彼以外に、こんなに私のことを受け入れてくれる人は居ないと思っていた。でも離れて、時間が経って思うことは、別にそんなことはないのかもってこと。
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私にとっては初めての恋愛で、初めての恋人で、初めての失恋だった。いろんな気持ちを感じさせてくれた彼には、今は感謝しかないと思う。楽しい時間を一緒に過ごしてくれて、ありがとう、心からそう思う。
ただ、友達にはなれないから、これからも会うことはないし、今何をしているかも知りたいとは思わない。今私は、前を向いているから、また一緒に居たいと思える人に出会えたらいいなと思う。