10月1日、私が独立した日。
あの日から5年。
小学1年生が中学生になると思うと、とても長い時間が家(ここ)で流れた。

私の人生の中での1番の転機であり、節目の5年記念日。
きっとどの時代を切りとっても1番濃くて、様々な経験をした。
時には、1人暮らしの大変さを実感したけれど、後悔をしたことは1度もない。
それは、初めて自分で選んだ道を叶えることができたことだから。

◎          ◎

1人暮らしをすると決めたのは、14歳頃。
ずっと住んでみたいと思っていた憧れの街があった。
おしゃれで素敵なカフェ、古着屋さんがあって、落ち着く緑もある街。
子供の頃から独立精神高めの私は、ぼんやりと1人暮らしをして、自分の部屋を手に入れることを考えていた。

中学生だったから予算も分からず、ただの憧れに過ぎなかったけれど。
ただ1つだけ分かっていたことは、お金が必要だということ。
中高と勉強、部活、それなりに恋愛もし、2度の受験と2度の挫折を味わい、思春期の私は、自分の思い描く方向に進んでいかない人生にもどかしさとできない自分への苛立ちを抱えていた。

アルバイトを始めてからは、月に5万円の貯金。
勉強、遊び、旅行をしたい学生にとって、月5万円の貯金は簡単ではなかった。
それでも1人暮らしを始められる金額を貯めることができた。
それなりに社会経験も積んで、憧れを実現できる年齢になって、初めて自分の足で立てているような気がした。

きょうだいで過ごした2畳分の私のスペースにさよならをして、みんなで囲んだダイニングテーブルが霞んで見えた。
「行ってきます」
帰る場所はここではないという寂しさもあったけれど、自分の足で歩き出したという希望の方が大きかった。

◎          ◎

1人暮らしをスタートさせてからは毎日が目まぐるしく過ぎていった。
好きなインテリアで部屋を飾り、音楽も映画も好きなタイミングで鑑賞できる。
帰宅時間、食事、入浴、就寝、全部が自由。
何よりも自分だけの空間があることが嬉しくて、ただ暮らしを楽しんでいた。

それと同時に、自由は全て自分次第で全部が自分に返ってくる。
生きていくことは、楽しいことや嬉しいことばかりではない。
仕事で上手くいかなかったり、人間関係で悩んだり。
家の外で起こる様々な出来事。
苦しいこと、辛いことの方が多いように感じてしまう。

そんな負の感情を家に持ち帰ってしまったとき、当たり前だけど、家には誰も居ない。
負の空気をそのままにしておくことも、リセットするのも自分次第。
放っておいてほしいと思うことも、誰かに当たってしまうこともできない。
1人暮らしを始める前の周りに人が居ることで苛立ちを抱えていたことが、当たり前のことではなく、自分以外の人が自分を見てくれていることのありがたみを感じた。

ある意味自分次第。
答えのない問題に悩んで、考え、誰にも見せない涙は幾度も流した。
その度に、自分成長度がアップしていくのを私が1番に感じた。
自分の機嫌を取ることも、自分を真っ直ぐ立たせておくことも私次第。

20代という変化の大きい年齢で、憧れだった街に暮らす経験をし、その5年という歳月はとても色濃く、新しい自分を作り出した5年。
「頑張ったね」と初めて自分を褒めてあげたいと思う。