クリスマスの数日前。我が家には、少し気の早いサンタが到来する。
「じいちゃんとばあちゃんからプレゼント届いとるよ」
母親の一言がその合図。
軽い足取りで確認に向かうと、目の前にあるのは巨大な靴下。
姉、私、弟で計3足。自分専用の靴下を見つけて、ウキウキで巨大靴下の中に入っている数々のプレゼントを取り出していく。

そう、我が家のクリスマス第一弾は、祖父母からのクリスマスプレゼント開封会なのだ。

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毎年届く巨大靴下は、まるで宝箱だった。
お菓子におもちゃ、洋服に図書カード……巨大靴下がパンパンになるほど詰め込まれたプレゼント。
ひとつ確認して喜び、また次のひとつを確認して喜び……の繰り返し。
無我夢中で靴下の中身を漁る、あのワクワク感は今でも忘れられない。
色違いなどで姉弟と若干違いがあるのもひとつの楽しみで、「なに入っとった?」「これあった?」とお互いの靴下を覗きあうのも恒例だった。

詰め込まれたプレゼントの中で、私のお気に入りだったのはクリスマスクッキー。クリスマスツリーや星の形で、プレーンとココアの2色展開。
シンプルだが、これがまた絶品なのだ。
その美味しさは、こっそり姉弟の靴下から拝借してしまおうかと思うくらい(実際にそんなことをすると喧嘩勃発不可避であるため、幼い私は必死に耐えていた)。
このクッキーがプレゼント選抜から外れてしまった年には、思わず母親に抗議したものだ。
今でも、似たようなクッキーを見かけると、懐かしの味を求めてついつい購入してしまうが、未だにあのクリスマスクッキーの味には辿り着いていない。

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そんなたくさんのプレゼントと思い出が詰まった巨大靴下が姿を消したのは、果たして何年前だっただろうか。
祖父母からは変わらずクリスマスプレゼントを貰っているものの、気づいた時には巨大靴下ではない、別の袋でプレゼントが届くようになっていた。

私も今年度で大学卒業。
年齢的には、いつサンタが来なくなってもおかしくない……いや、むしろ、「まだサンタくるの!?」という周りの反応を見ると、長く貰いすぎているくらいかもしれない(中学校卒業と同時にクリスマスプレゼントを貰わなくなったという友人の話を聞いてとてもとても驚いて、思わず他の友人にもクリスマス事情を聞いて回ったのはまた別のお話)。
それでもやはり、あの巨大靴下が無性に恋しくなるのだ。
クリスマスが近づくと、「巨大靴下ないかな……?」とソワソワしてしまうのだ。
そして、そのソワソワを実感した時、「私はプレゼントだけじゃなくて、こんな楽しい気持ちまで貰っていたんだ」と初めて気づくことができた。

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毎年毎年、巨大靴下と共にたくさんのワクワクを届けてくれた祖父母には感謝しかない。
いつかは私も、巨大靴下と共にちょっとした幸せを届けられる、素敵なサンタになれるだろうか。
そんな希望を胸に抱きつつ、とりあえず今は、大学生活最後のクリスマス、思いっきり満喫してこようと思う。

それでは、メリークリスマス!!