去年、小さなゴールドクレストの木をホームセンターで買った。色の薄いもみの木のような見た目をしていて、顔を近づけるとレモングラスのような爽やかな香りのする植物である。
ずっと、いつか我が家に迎えたいと思っていた。

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祖父母の家にゴールドクレストの鉢植えがあり、私はその植物の存在を知った。
冬になっても葉が落ちず、葉の緑色も日本の木と違い、淡い黄緑色をしている。ぽってりとした茶色い甕のような鉢に植えられていて、それがとても似合っていた。好きな木だった。
12月に祖父母の家へ遊びに行くと、ゴールドクレストは玄関前の良い位置に移動されている。そして、てっぺん近くに金色のりぼんがひとつ。ささやかな、クリスマスツリーの代わりである。あれもこれもと飾り立てないところがゴールドクレストに妙に似合う、と子ども心に思っていた。
母が押し入れから毎年出してくれる、もみの木のクリスマスツリーも大好きだけど。そっちは、ブーツに入った可愛いうさぎとか、つるんと赤いりんごとか、そういう飾りがメインだった。もみの木は土台にすぎず、華やかになってから初めてクリスマスツリーとして完成していた。

現在、我が家にいるゴールドクレストは、1年間でずいぶん背が伸びた。今や2歳の息子といい勝負をしている。

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今年も12月が近づき、お店がクリスマスを全面に押し出し始めた。赤、緑、金、銀。売り場が浮かれている。つられて、いくつかのツリー用の飾りを購入してみた。
帰宅し、息子に開封した飾りを手渡す。
「これから、ゴールドクレストくんにこの飾りをつけます。お手伝いしてください」
クリスマスが近いからね、と言ったものの、彼はクリスマスが何なのかわかっているのだろうか。クリスマスを題材にしたいくつかの絵本は持っているけど。

子どもの指では、ちょっととげとげしているゴールドクレストに飾りをひっかけるのは、難易度が高いようだった。一緒に持って、ひとつずつ。楽しいようで、にこにこする息子。
十数個の飾りは、ほとんどがシルバーのものを選んだ。てっぺんの星もまつぼっくりもプレゼントも、全部。ゴールドクレストをあまりごてごてさせたくない。でも、りぼんひとつの境地に、まだ私は立っていない。そういう狭間でのセレクトだ。

全てを身につけたゴールドクレスト。色の統一感でシンプルさを演出できて、いい感じ。
息子はつけ終わると途端に興味を無くしたのか、プランターの土をいじり始めた。

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俯き加減の後頭部を見て思う。
これから彼の育つ家、そのクリスマスツリーは私の趣味でこうなった。これからも毎年、一緒に飾り付けをしたい。反抗期になって嫌がられるまで。
そして彼が大人になって、ふとゴールドクレストを目にしたとき。ノスタルジーを少しでも感じてほしい。さすがにそれは強要がすぎるが。少なくとも私は今後、そうなるだろう。自分の幼い頃の記憶と、息子との記憶と。