今から6年前の今頃、私には大切な友人ができた。彼女の名前は友里ちゃんと言った。
教職を取るに当たって体育学が2単位必要であることが分かり、私は修士課程1年にして受講者の大半が学部1年生である体育学を受講することとなった。4年前、私は同様の講義を受けたが運動能力のなさから評定が振るわず、逃げてしまった科目であった。

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体育学は名前の通り体育の実技をする講義で、私たちはスクワットや器具を用いた筋肉トレーニングを行った。運動神経のなさと周囲より5歳年上というハンディが重複し、周囲の人が当たり前のようにできるトレーニングを上手くこなすことができなかった。それでもみなと一緒に練習をするのが楽しく、好きな講義のうちの一つとなった。
同じぐらいの身長の学生とペアを組んで行う時にはちょうど男女の数が奇数で、女子の中では私が一番背が高く165センチ程度の男子学生とペアを組むこととなった。一部の男子生徒は「ふー」と声を上げていたが、そんな非日常も楽しい思い出となった。

講義が始まる20分前くらいになると女子更衣室ではおしゃれの話で盛り上がり、当時私が愛用していたレッセパッセや今は販売終了となったコスメラデュレを紹介すると、
「めっちゃかわいいー。ほかにもいろいろ教えて」
と、頼ってくれる子が複数人いた。それまで勉強ばかりしてきた道産子と比べて関東出身の私はおしゃれの知識が豊富にあり、ちょっとしたおしゃれ番長となった。

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その中でも一番仲良しになったのが、友里ちゃんだった。
友里ちゃんと仲良くなったきっかけは、体育の講義が終わった後に一緒に食堂に行ったことだった。体育の講義は3限目にあり、私たちは遅いお昼にならない軽食とおしゃべりを楽しんだ。家族の話、高校時代の思い出、使っている化粧品(すっぴんだよと言って驚かれた)……そのどれもが新鮮で楽しかった。長年周囲に人がいない生活を送ってきた私にとって、1週間の中で最も楽しみな時間となった。

そんな食堂通いが続く度に、私はより深く罪悪感を覚えるようになった。
私は本当の学年と年齢を話していない。彼女は私を同級生だと思っている。しかし、前述したように私は体育の講義がダントツにできない。今更4つも年上なんて言えない。とうとう周囲のメンバーには年齢を公開せぬまま、体育の講義を終了してしまった。

講義が終了しようとしていた頃、私は彼女とお店の記事を紹介するアルバイトをすることになった。とうとう話すときが来たと思って、知り合ってから半年ほどたった頃、本当の学年と年齢を話した。
彼女はたいそう驚いていたが、ずっと隠し通さないことこそ本当の友情だと思った。

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アルバイトが終わり報酬やパンフレットを分けたあと、私たちは特に連絡を取ることなく疎遠になってしまった。
もしかしたら、半年間隠し通してしまったことが響いているのかもしれない。それとも連絡先への対応で、その杜撰さから私が一度取引先に対して長文のメールを送りつけてしまったからか、それともそれ以外の理由なのか分からないが、以前と較べて関係が疎遠になってしまったような気がした。1年ほどたった後に食堂でたまたま彼氏といるところを見かけたが、よく覚えているね、というような反応であった。

けれども、私は6年前にみなで体育の講義を受けることができたこと、友里ちゃんとたとえ一時的にでも仲良くなれたことを嬉しく思っている。
もし最初から本当のことを伝えていれば結果は違ったかもしれない。また、むこうがそこまでよい友達と考えていなくとも、なかなか友人ができなかった私にとって彼女と過ごせた半年間はとても楽しい時間であった。

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もしタイムスリップができるなら、2016年の後期に戻りたいと思っている。あの頃が今までの人生の中で一番楽しかった。
そんな楽しい時を一緒に過ごした友里ちゃんにありがとうと伝えたい。そして、最初から素直に年齢と学年を伝えなかったことに関しては、ごめんなさいと伝えたい。