役立たずでごめんなさい。隠してごめんなさい。できなくてごめんなさい。出来損ないでごめんなさい。
こんな私でごめんなさい。
幾度となく謝り、1人涙を流した。でも、謝る相手は、目の前にいる人ではなかった。

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小学生の時、私は1度だけ4階屋上の手すりに足をかけたことがあった。
死ぬためだ。結局怖くて飛び降りることはできなかった。でも、あの時初めて本気で死んでしまおうと思った。
今から遡ること20年前、ピアノのコンクールで演奏失敗。今までの練習してきた努力を考えると自分でも受け止めきれないほどショックだった。だからこそ、演奏後に「間違えちゃった」と苦笑いすることが精一杯だった。
でもそれが、ふざけているように見られてしまい、母に激怒された。母の平手打ちはじんじんと痛かった。

その1ヶ月後、学校のテストでも失敗。母に怒られること間違いなしの点数を取ってしまい、テストを隠した。そしてそれがバレた時、母の雷が落ちた。
パァンと叩かれた頬。頬のじんじんとした痛みが全身に駆け巡り、体は熱を帯びた。そして言い放たれた。
「役立たず!出来損ない!こんな子……こんな子、私の子じゃない!」

頬の痛みは心の痛みに変わった。どこかで思うことはあった。
私は姉よりも能力が劣る。私は母からしたら娘として出来損ない。役立たずの子だ。薄々感じていた。いつか言われるかもしれないと心の奥底で感じていたことが、この時明らかとなった。

それから、母はあからさまに出来のいい姉を可愛がり、出来損ないの私の話に耳を傾けなくなった。父はただ見ているだけで何も言わない。私だけが家族の中で取り残された。
「生きてる意味ない」
家族なのに家族として見られない。一番認めてほしい相手が、私を役立たずと見捨てた。

そして、頭の中でリピートする「こんな子、私の子じゃない」という言葉。
お腹を痛めながら産んだんじゃないの?私だって、頑張らなかったわけじゃないし、認めてもらえるように頑張ったこともたくさんあった。それなのに、これは全部出来損ないの私が悪いの?

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そこからは、自己肯定感がガクッと落ちた。中学生の頃は成績が上がらず、出来のいい姉と比べられ、ますます自分のできなさを再確認することになった。
自分はダメな子。やっぱり役立たずで出来損ないだったと認識する。
自分でそう思うようになってしまってからは、頑張っても無駄、私なんかがと、頑張ることを諦め、自分はこんなもんだと線を引き、自身を卑下して見るようになった。

だから、学校で嫌がらせにあっても、私が悪いと自分の中で我慢した。相談したい出来事があっても自分のことだから、自分のせいだからと自分一人で背負った。体が悲鳴をあげても、平気なふりをした。病院で手術しないと治らないと宣告された時も、私のことだからと1人で耐えた。手術をする時も1人だった。

ひとりぼっちで涙を流した。声を殺して1人泣いた。
全部私の行いが悪かったんだ。こうなったのも、私がいけないからだと自分の中で消化しようとした。死のうとまでは思わなくなったものの、なんのために生きているのか、わからなくなっていた。

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そしてどうしてこんな風になってしまったかと問うた時、私は私を大事にしてこなかったことに気づいた。

大丈夫なふりしてごめんなさい。
気づかないふりしてごめんなさい。
自分の気持ちに嘘ついてごめんなさい。
自分のことを大事にしなくてごめんなさい。
抱え切れないものを抱えようとしてごめんなさい。
自分が傷付つくだけならいいなんて思ってごめんなさい。
苦しませてごめんなさい。
こんな考え方にしてしまってごめんなさい。

もう、自分を責めて長期間経過し、私の性格は大きくは変えられなくなってしまった。謝ってももう私の時間は戻らない。
でも、謝ることができた今、きっと次からは前よりも自分を大事にできる。
今から、私を大事にするよ。
自分を大事にしたら、周りも大事にできる気がする。
自分を大事にしたら、大事にしたいものをきちんと大事にできる気がする。

私を大事にして、私を大事にしてくれる人も大事にする。
これから私は優しさと温かさであふれる未来を願って、自分も周りも大事にできる人になろう。