毎日、新聞を読むようになった。まだ読み始めて7日目だし、毎日全部というわけにはいかないけど、早速効果を感じている。
きっかけは図書館で借りた本だった。

私の最寄りの図書館にも、年始に福袋が用意されていた。今年も福袋は買わなかったし、気に入らなければ返せばいいだけだと、とりあえず借りてみることにした。袋はもう残り3つほどしかなかったが、興味があって「国の動かし方」という題の袋を選んだ。
帰宅後に開けてみると、中には中高生向けの政治の本が3冊入っていた。国を動かしたいなら、まずは政治について知らなければならないという、至極当たり前のことを突きつけられて胸が痛い。学生の頃から政治経済は苦手で、教科書も見たくなかったが、避けて通れない道だと覚悟を決めた。3冊のうち1冊を読みきって、これから毎日、新聞を読むことにした。

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初日はとりあえず、全部読もうと決めた。広告などは読み飛ばすけど、それ以外は全部読もう。そう意気込んで始めて、最初は政治の話ばかりで頭が痛くなりそうだった。
まだ3分の1も読めていないのにと気持ちが重くなったが、硬い政治の話は最初の数ページで、真ん中は読者の声や寄稿文、スポーツ欄など、読みやすいものが続き、最後により身近な政治的話題という感じで、一面から順に読んで、楽しめるような構成になっている。想像以上に記事は多種多様で、肩の力を抜いて読める小欄などもあり、娯楽として新聞を読む人が多いことも頷けた。

3日読み続けたら、格段に政治に詳しくなれた気がした。今までもふんわりとは政治についても知っていたけど、なんとなくのイメージしかなかったと思う。
ウクライナやブラジルで大変なことが起こっているけど、戦争が起こっていること以外、何が大変なのかは見えてこなかった。それが新聞を読むことで、ウクライナは今何に不安を抱えているのか、ブラジルで誰が何をしたのかということがわかった。
雲のような、あるのはわかるけど掴めないものが、実体のあるものとして掴めたような感覚だ。一歩ずつだけど、地に足をつけてものを考えられるようになった気がする。

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首相が誰だかは知っているけど、何をしているのかはよく知らないし、どこかの大臣の不祥事があったのは知っているけど、何をしたのかはよく知らなかった。
この状態では、政治の話なんかしたくてもできない。若者が政治の話をしないのは、したくないのではなく、できないんじゃないかと思う。誰だって、わからないものの話はできない。話そうとしないから、知ろうとしないというのもあるだろうし、そういう話を毛嫌いする人も多いから、目立ちたくないと思えば、政治の話なんかしない方が無難だという考えにもなるだろう。
それでも、政治も分かれば楽しいということに気がついた今なら、間口さえあれば若者の政治参加も活発になるだろうと思うようになった。なんだかんだ私は、歴史の本などは読んできたおかげで、他より上手く飲み込める記事もあった。読み物での導入が必要なのかもしれない。

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かくいう自分も、新聞はこれまでほとんど読まずにきた。一面に目は通すけど、記事はあまり見ずという感じだった。一面のコラムが夕飯時の話題に上がることはあっても、政治的な内容についてはあまり進まず、私が父に質問をぶつけるばかりで、発展した話し合いはできなかった。小さい頃の私の仕事は、新聞を取りに行くことであったのに、ほとんど読まずにいたことを反省した。
たった3日で、自分の考えに厚みが出たことを実感したし、世の中で起こっていることに興味を持てるようになった。
さらに知りたいと思って、ネットで首相官邸のページも開いてみた。岸田首相の方針については、納得できるものもできないものもあったけど、そうして初めて批判や肯定もできるのであって、今までなんとなく政治そのものに批判的であったり、よく考えずに迎合していたことを恥じた。しかし若者に限らず、こういう人が日本には多い気がする。

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幸い私たちは、報道の自由が保証されている国で暮らしている。全てが包み隠さずというわけではないのかもしれないけど、知りたいと思えばいくらでも情報が手に入るし、世の中で起こっていることは、家に届けられる新聞や、テレビの電源をつけるだけで見られるニュースで知ることができる。
しかし、周りがほとんど女性だからか、ニュースを見ている人はともかく、新聞を読んでいる人は探すのにも苦労した。新聞をとっていない家庭もある。それもそれでありだけど、新聞が目の前にあるのに読まなかったのは、私にとっては勿体無いことだった。

新聞は図書館にも、場所によっては喫茶店にも置いてあるし、コンビニで一部だけ購入することもできる。私は新聞を読むことで、社会を見る目と、価値観が変わった。
もし何かを変えたい、変わりたいと思うなら、新聞を読むことは手軽で分かりやすい変化が得られる方法だと思う。自分の周りのことについて知るためにも、新聞はちょうどいいはずだ。
何かを変える方法の1つとして、選択肢に入れてもらえたら嬉しい。