「化学流産」で失った命と彼。妊娠・出産の知識に乏しかった私たち

私が世の中を変えるなら、男女問わず妊娠・出産について学ぶことを義務づけたい。
体に違和感を覚えた日だった。
真っ先に思い浮かんだのは、妊娠だった。
21歳にして初めて妊娠検査薬を使った。
使い方もわからず、説明書を何度も読んでいざ実践。
時間が経って恐る恐る見ると、陽性反応。
目を疑う光景だったのを今でも覚えている。
真っ先に伝えたのは、当時お付き合いしていた彼。
もちろん、お互いに将来のことも考えていたからこそ、した行為でもあった。
私は正直、嬉しかった。大好きな彼と、ずっと一緒に居れると思うと嬉しかった。
彼の反応は「まじか……」。
え?思ってた反応と違う。
ちゃんと話を聞いたら、本当に妊娠するとは思わなかったと。
「まだ病院で検査したわけでもないから正確じゃないからね」と彼を宥めた。
あいにく、お盆休み期間のため1週間、病院が休みだったので待つこと確定。
彼は、この先の事を考えたいからというのでこの1週間は別々の時間を過ごした。
検査に行く日の朝、出血した。
これが何の出血なのか全く分からなかった。
とりあえず、検査に行こうと重い腰を上げた。
病院に行くまでの道も、診察の順番を待つ時間も、怖くて涙が出そうだった。
診察結果は「化学流産」。
稀にあることだから大丈夫だよと落ち着かせてくれた先生。
「流産」って言葉だけじゃないの?と沢山調べた。
色々見ていくと色んな名称があった。
そのままを彼に伝えた。
久しぶりにあった彼は、素気なくなっていた気がした。
結果を聞いた彼の表情は、目で分かるほど安堵していた。
私は気持ちの整理がつかなかった。
彼の気持ちを聞いたら、
「妊娠って簡単にするんだね」
「何も知識無いから怖い」
「ちゃんとお父さんになれるかわからない」
そう言っていた。大好きながらも、最低と思った。
世の女性を敵に回すような発言。
それから数日後、彼から別れを告げられた。
「ジジはいい人過ぎて俺にはもったいない」
「ジジにはもっといい人いるよ」
「嫌いになったわけじゃないよ」
別れのセリフ本でも見てきたの?と思うほど、淡々と言葉を発していた。
何より「化学流産」のことが引っ掛かっているらしい。
「もう一緒にいることができない」と、はっきり言われた。
絶望だった。上手くいっていればお腹に宿っていた、ひとつの命。
大好きな彼と強制的な別れ。
私から、何も無くなった。
あの時、私や彼に知識があったら少しは変わっていたのかなと何度も思った。
受け入れる気持ちや気持ちの整理。
経験しないとわからないことばかりだからこそ、知識がなかった。
性教育に限らず、妊娠・出産の勉強は思春期の頃にする授業は恥ずかしい気持ちもあるけれど、今の時代は中学生や高校生で妊娠する子もいるので大切なことだと思う。
学生の頃の妊娠は男性側が年齢的にも責任が取れず、シングルマザーの割合が高いような気がする。
それ以上に望まない妊娠から、育児放棄や幼児遺棄のニュースをよく目にする。
コロナウイルスが流行して、世に言うお家時間が増えたことによって、学生の妊娠率が増えたと聞いた。
世の中の変化とともに、少しでも変わってほしいなと切に願う。
少子高齢化が進む中で新生児の誕生が喜ばしいと思える世の中に変わりますように。
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