「この子みたいになりたい」
SNSを見て自分と照らし合わせてみた未来。
私もこの子みたいにキラキラしたい、あの子みたいに旅行したい、あの子みたいな服が欲しい、この子みたいなあの子みたいな……。
いつの間にか私のなりたい私は私ではなくなっていた。
行きたい場所、やりたい事、なりたい自分全てをSNSからみつけていたことに気づいた。
そんな頃に、私はSNS断食を試みた。

◎          ◎

SNS断食は言葉の通り、携帯を触る時間をなるべく少なくするための行為だ。
携帯は「電話をするため」「写真を撮るため」の物だと自分を洗脳し、鞄にはメモ帳を常備した。
仕事など携帯でもできる事を、あえてパソコンで行ったりもした。
携帯を持たずに旅行をしたこともある。
最初は不安だったが次第に慣れ始めた。

数ヶ月経った頃に変化が現れた。
すぐに調べていた事をいったん考えるようになった。「あれ、どんな漢字だっけ」という疑問に自分なりにメモ帳に何度も書き直し思い出してみる。すると意外に書けたりするのだ。
いつもなら営業時間を検索していたが、電話して聞いてみると「普段なら予約は受け付けていないのですが、混み合いそうなので席を確保しておきますね」と意外な優しさを受けたりもした。

◎          ◎

私は昔からカフェを開きたいという夢があった。
「カフェ」と調べると、「カフェ開業 儲からない」「カフェ開業 やめた方がいい」などとネガティブな意見が目に入る。
いつの間にか私の夢は見知らぬ誰かによって潰されてしまっていた。
気付かぬうちに可愛いメイクに服を着て、オシャレなカフェへ行くSNSの中の人々の幸せの中央値を目指していたのだ。

しかし、現実の世界にフォーカスしていくうちに、カフェの開業に興味を持ってくれる人達に出会った。
道を通れば「こんなところに」と思う場所にあるテナントや空き地が目についた。
現実の世界ではネガティブな意見を私にかける人は誰もいなく、むしろ手を差し伸べてくれる人で溢れていた。

メモ帳には自分が思った事を書き留め続けた。
SNSをしていた頃は、自分が思ったことも次の瞬間には消えてなくなっていた。
「消えてしまうほどのアイディアはいらないということだろう」と自分を肯定していたが、メモ帳を見返すとSNSの中より自分の中に面白い感覚があることに気づいた。
急に思い立つ「⚪︎⚪︎へ行きたい」「⚪︎⚪︎を食べたい」という自分の声に耳を傾けるようになった。

◎          ◎

大人になるにつれ、昔よりも未来を思う時間が多くなった。
今日の夜ご飯どうしよう、今週末は何をしよう、夏の旅行はどこへ行こう、30歳になったらどうしよう。どうしよう。
未来にワクワクするよりも未来を心配する割合が高い。街中の広告を見ていても「未来のために」という保険をかける「今」を提案していることに気づいた。

私は未来のために今を楽しく生きれば、楽しい未来が訪れるとSNS断食を通して分かった。
不安という感情が不安要素のある未来を構築する。
未来のために「今にフォーカスして」生きる。
自分の考えと他人、社会の考えが交わらないように心がけている。