「明日の会議は……はい、10時からですね、承知しました」
仕事中、新たに予定が決まると、忘れないうちに手帳にメモする。
「今日のあれは、失敗だったな」
家に帰れば、ノート相手に愚痴をこぼす。
「1週間仕事を頑張った。今日くらいは、羽目を外してもバチは当たるまい」
金曜日の夜中に、大好きなアイスにかぶり付きながら日記を書く。

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忙しい日々の中でも、物を書くために様々なアイテムを使い分けている方も多いかもしれない。かくいう私も、少し前まではそうだった。しかし、もしそれが1冊で済むとしたら、目に映る景色はどんなふうに変わるだろうか。
2023年、私は、スケジュール管理も、メモも、日記も1冊で済む手帳が欲しい。今回は、そう思うに至るまでの話をしよう。

2022年の始め、祖母が体調を崩してしまい、我が家はにわかに忙しくなった。母は、仕事と家事をこなしながら、看病のために毎晩祖母の家に通うことになった。
母が不在の間は、父と私の2人で過ごさなければならない。食事を用意して食べ、食べ終わったら食器を洗う。息つく暇もなくお風呂をわかしつつ、洗濯機を回す。夜じゅうああだこうだ言いながら、終わらない家事に追われる。そんな状況では、いつものように机に向かってノートに愚痴をぶちまけ、日記を書く時間などない。
それでも、書きたい。悩んだ末に思い付いたのが、持ち歩いていた手帳に書くという方法だった。

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それからは、予定はもちろん、その日の体調や気分、思ったこと、欲しいもの……頭に浮かんだことは何でも、そこに書くようになった。
すると不思議なことに、日々がうまくいくようになった。仕事の予定に限らず全部のことが書いてあるので、自分にどのくらい自由な時間があるのかが一目でわかるようになった。それまで、お休みの日は朝起きてから、その日の気分で物事を決めていたが、そうではなく、やりたいことを計画的にやるという日も増えた。それはそれで、終わった時に達成感に浸れて楽しいものだと知った。

味をしめた私は、もっと書きたくなった。市販の手帳のメモ欄では物足りなくなってきて、思いきって、自分で手帳を作ることにした。
お気に入りのバインダーに、スケジュール帳のリフィルをセット。スケジュールはそこに書きつつ、メモしたいことが多い時は、ルーズリーフでどんどんページを増やしていった。
ちなみに、今までにここに投稿したエッセイも全部、その中に入っている。いわば、手帳+メモ帳+日記帳+ネタ帳だ。書くことが好きな私にとっては、この上なく便利なものが出来上がった。

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それから半年ほど経った、ある日のことだった。
いつものように、メモのページを増やすためにバインダーを開けたその瞬間、事件が起きた。上のほうのページがバインダーから外れ、バラバラになってしまった。
そう、ページが増えすぎて、小さなバインダーには収まりきらなくなっていたのだ。
とてつもなくダサい光景だが、その後も私は懲りなかった。1回ページを増やそうとするたび、はみ出している部分をガサガサ外して、その上から新しい紙を付け、また戻すということをしばらく続けた。
次第に、そうしてまで使い続けることがストレスになってきた。思う存分書きたくて始めたことだが、そうなっては本末転倒だ。私は、泣く泣くページを増やすのを諦めた。

それからは、ノートにスケジュール帳を貼って使っている。これなら、ひたすら書ける。ようやく悩みから解放されて、ご機嫌だ。
調べてみると、大手文具メーカーから、手帳とノートが1冊で済むという商品が出ていた。やはり、そういうものが欲しい人が、一定数いるのだ。
これは、買いたい。今年、お迎えしよう。そう考えただけで、いい年になりそうだ。