私は彼女と仲良くなった日のことを明確に覚えている。
その日まで私と彼女は同じクラスではあったが、他のグループにいて、話したことはなかった。
高校2年生の修学旅行、場所は紅葉に染まる京都のどこかの寺。
修学旅行の行動班も別々のグループだった私たちは、すれ違いざまに一言二言交わす機会があった。
その瞬間、ビビッときた。
私と彼女の人生が交わった瞬間だった。

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その後の修学旅行はもちろんのこと、彼女とは卒業までずっと一緒に笑いあった。
彼女は、とても頭が良かったが、その反面、とてもおっちょこちょいで、好奇心が旺盛で、なんでも知りたがったので、知識の引き出しが多く、話していて面白かった。
そんな彼女の伝説を、少しだけ書いていこうと思う。
高校3年生、文化祭で屋台を出し、綿菓子を売ったときのこと。
余った綿菓子をコンクリートに並べている彼女に、思わず行動の理由を聞く。
「蟻さん食べるかなおもて……」
少し恥ずかしそうに彼女は言った。
そんな彼女が面白くて愛おしくて、私は晴天の空を仰ぎながら大口を開けて笑ったのを覚えている。
卒業写真、学年で集合写真を撮るときには、二人で一緒に目をつぶった。
あらかじめつぶっておけば、どのタイミングでシャッターを切られても大丈夫という彼女の提案によるものだった。
このように、彼女はいつも私では到底考えつかないような角度からの言動で私を笑わせてくれる。

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そんな彼女とは、当然のごとく、今も友達だ。
もう10年来の友達になる。
家も近く、お互いの彼氏も紹介しあう仲である。
最近は、一緒に日光観光に行った。大変不謹慎ではあるのだが、日光東照宮にある数多の像の全てのポーズを真似したり、華厳の滝ではいかに口から滝が出ているように写真が撮れるかを競い合ったりもした。
彼女とは「楽しい」の波長がよく合う。
そして、「疲れた」「おなかすいた」等の波長もよく合うので、遊んでいると、とにかく自然体で笑うことができる。
そんな彼女の最新の武勇伝は、熱々のエビを口に放り込んだ今年のお正月だ。
今年のお正月は、高校時代の友人たちが地元に集まり、焼肉を囲むことになっていた。
焼肉屋のセットメニューで、エビが提供された瞬間、彼女の眼の色が変わった。
彼女は根っからの海鮮好きだ。
すぐにエビを焼き上げると、そのまま口に放り込んだ。
当然熱い。
彼女は熱々のエビを口から半分出した状態で私の方を見てくる。
かわいらしい顔に似付かないギャップのあるその行動が、私のツボをここぞとばかりに刺激する。
私は肉の焼ける匂いを大いに肺に含みながら、高校の時と同じように大口を開けて笑った。
これからも彼女は私のことを笑わせてくれるのだろうか。
今後の彼女の動向から、目が離せない。

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そして、もしかしたらこのエッセイを読むかもしれない、この物語の主人公ともいえる私の友人へ。
これから先、どんどん年を重ねて、環境もめまぐるしく変わることでしょう。それでも私は、なんとなく、あなたとはずっと出会った頃と同じように笑いあえる気がしています。
これからも、持ちつもたれつ、のんびり2人のペースで笑いあっていこうね。