最近休みの都度、私と妹は実家へ行く。
理由は学生時代のアルバムや大切なものを探しに行くため。
本当に理解し難いと思うけど、服から持ち物、何でも制限されるのが当たり前の家庭で育った私達は、身に付けるもの全てが指定されていた。また、進学して不要になった教材や荷物を処分しようものならひどく怒られた。たとえそれを破棄できても元に戻され、ずっとそれらに触れない状況下にあった。
最近家族がバラバラになったことで突然これまでの荷物を整理することになり、私達は休みの度に荷物の山を少しずつ小さくしながら、アルバムや大切なものを探している。
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作業をしているとその山から様々なものが出てくる。
小中時代の答案用紙やプリントの束に、一度も着用していないのにシミがついている服、何十冊もの教科書とノート。生徒会選挙で自分が使ったタスキやある大会で優勝した時の賞状、絵画コンクールで賞をいただいた作品も丸められて山から可哀想な状態で出てきた。
中身を確認して見返したいものだけ残し、教科書類は紐で束ねてやっと処分できた。絵画も写真に収めて、思い入れのあるもの以外は全て捨てた。
もうすぐ30歳なのになんで20年前の教科書とか束ねて処分してんだろ、私。
そして、嫌な思い出もじわじわ蘇る。
片付けようと荷物を触ろうとしたら自分達のモノなのに何故かすごく怒られたよなとか、賞を頂いてほめてくれたこの絵を少しの間でいいから部屋に飾って欲しかったなとか。
家庭科で作った料理を写真に撮る宿題を出されたけど、料理も禁止されていたから想像上で作ったご飯の絵を描いて提出したなとか、自分で買ったこの服結局1回も着れなかったなとか。
些細なことだけど荷物を1つ手に取れば、また1つ。記憶が蘇っては苦しい気持ちが私をじわじわ蝕む。そしてアルバムは未だ見つからない。
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一緒に作業中の妹がある冊子を手に取り、ぽつりとこぼした。
「半成人式の時、生まれてから今までの写真を使って発表する授業があったのね。みんな赤ちゃんから変わってないなぁとか、AとB同じ幼稚園だったんだね、とか盛り上がってたけど、私1枚も写真持っていけなかったんだ……。だから写真の代わりに絵でまとめたやつ出てきたけど、悲しいからもう捨てる」
私もその授業を受けた記憶があった。幸い、私は小学校入学時に妹と撮った写真を1枚だけ持って行けた。何枚も撮ってくれていたはずなのに写真を現像していなかったり、現像した写真が山に埋もれて見つからなかったりしたせいで私は1枚だけ、妹は1枚も写真を持っていけなかった。周りの同級生のわいわい楽しそうな話し声が子供ながらにすごく苦しかった記憶がある。
困ったように笑う妹の表情を見ると、本当に喉元が苦しくなった。でも苦しいのはきっと妹の方だから、ぐっと泣きそうになるのを堪えた。
育ててもらって感謝しているし、楽しいこともたくさんあった。だけど誕生日はいつも出先で過ごしていたし、運動会や部活の応援は学校や大きな会場で行われたから、本当にこの家での楽しい思い出が見つからない。
いつも喧嘩ばかりの両親だったけど、私が推薦入試に合格したり、大会で優勝したりした時には2人ともすごく喜んで誉めてくれたから、喧嘩も落ち着いた気がして。だから色んなことを頑張ってきたのかもしれない。そんな理由で学業に部活に生徒会、学校外の活動に励んでいたかもしれない子供時代の私の無意識な行動を思い返すと、苦しく感じてしまった。
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片付けを続けると半成人式で自分が書いた手紙も出てきた。
30才のわたしへ
勉強をがんばって、好きなことはたくさん勉強できましたか?
好きなことを仕事にできていますか?
30才のわたしは旦那さんや子どもに囲まれて幸せに暮らしていると思います!
わたしも勉強や運動をがんばるので、未来のわたしも頑張ってください!
もぴより
行きたかった大学は断念してしまったし、今の私は子どもどころか旦那さんもいない。10歳の私が思い描く幸せには程遠いと思う。だからごめんね、と心の中で謝った。
でもね。夜間の短大だったけど一生懸命学んだり、仕事でやりがいを見出したり、できる範囲で私も頑張ってきたよ。少しでも伝わってるといいな。
今、すっごく苦しい。
大切にしていたものがどんどん無くなり、頭では分かっているけど心が追い付かないことがたくさんある。でも、荷物を少しずつ処分しながら小さい頃の苦しみと向き合うことで、きっと今の私は前進していると信じている。
こんなネガティブな内容、書こうか迷った。だけど、苦しみを昇華するため、今感じた苦しみを忘れないよう自分のために私は書く。
まだまだ荷物は減らないし、アルバムも見つからない。
だけど、いつかこのことも笑って話せる日が来ると信じている。20年後の私がぱっと思い出して、このエッセイを読み返した時、「こんなこともあったなぁ、でも今の私は幸せだよ」と自分に優しく声をかけられるように、今は妹と支え合いながら頑張っていこうと思う。