同世代の男女に「悪い女」のイメージを聞いたところ、「男を横取りする女」=「悪い女」というイメージが強いようだ。

そういえば、小学生の時に「男を横取りする女」が2人いたのを知っている。

1人目は、ショートヘアが似合う、クールビューティーで色白な若い女の先生。他のクラスの担任だった。よくロイヤルブルーのトップスを着ていた印象が強いので、以下「あじさい先生」と呼ばせてもらう。

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私の通っていた田舎の小学校では、若い先生が赴任してくると、小学生たちからチヤホヤされるのが定番。しかし、クールビューティーで面白みに欠けていた「あじさい先生」は特段そういったことはなかったと記憶している。
私が中学生になった頃、「あじさい先生」が異動になったという話を聞いたが、特に何も思わなかった。
そしてちょうど同時期に、子ども達の面倒見がよくて有名な中年男性の先生も異動になったとのこと。
彼は既婚者。ガリッガリでしわくちゃな見た目が野菜のピーマンに似ているということで、小学生たちから「ピーマン先生」という愛称で親しまれていたので、以下「ピーマン先生」とする。それほど慕われた「ピーマン先生」が異動になったのは、関わりがあまりなかった私もさすがに驚いた。

私の母はPTAを務めていたこともあり、「あじさい先生」と「ピーマン先生」が異動した理由をママ友を通じて知っていた。

彼女らの異動の理由は、不倫だった。
「『ピーマン先生』、ショッピングモールで偶然会った時、ロングヘアの奥さんと歩いててお似合いだったのに......!」なんて話を母が話していたのも覚えている。

ここで「あじさい先生」のネーミングの補足をしておくが、「あじさい」の花言葉は「浮気」である。

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そんな「ピーマン先生」が受け持つ、ひと学年上にお兄ちゃんが居たNちゃん。彼女は、小学生の時の私が出会った「男を横取りする女」の2人目である。

小学5年生の頃、私を含めた仲良し3人組グループがあった。
ひとりはMちゃん。赤くて細ーいフチのメガネをした女の子。
もうひとりはNちゃん。見た目の特徴といえば......。
お兄ちゃん・Nちゃん・弟くんの3人は美人なお母さんに似ず、全員お父さんの顔のコピー&ペーストだったなぁという印象。

私たち3人には、それぞれ好きな男の子が居た。
Mちゃんは同級生の“サッカー坊主”(丸刈りだった)。
私はひと学年上の“オシャレボーイ”。
Nちゃんはコロコロと好きな男の子が変わっていたので、最初に「好き」と申告してくれた男の子が誰だったかを覚えていない。

このメンバーで当時流行りの交換ノートをしていたのも懐かしい。
その名も“恋乃音(こいのおと。つまり、恋ノート)
小学生の考えることなので、当時は「上手いネーミング!」とでも思っていたのだろうが、相当ダサい。

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“恋乃音”のルールは、①毎日回すこと②好きな男の子と校内ですれ違ったとか、話したとかいうエピソードを共有すること③好きな人が変わったら報告すること、といった3つが主軸となっていた。

Mちゃんが好きな“サッカー坊主”は、私たち3人と同じクラス。Mちゃんが教室で“サッカー坊主”と話す様子を、私とNちゃんはこっそりと見守るほどお互いの恋を応援していた。

Nちゃんはある日の“恋乃音”で「お兄ちゃんの友達の、ハーフ顔のサッカー少年が好きになった」と報告。
相手はお兄ちゃんと同じくひと学年上なので、よく自宅に遊びに来るらしい。Mちゃんとその報告を読みながら、放課後に好きな人が家にいるNちゃんの状況に、勝手にドキドキしていたのだが。

ある日、“恋乃音”でNちゃんの順番が来る前に、Nちゃんから「リサちゃん......話したいことがあるっちゃけど......」と、こっそり呼ばれた。
「どうしたと?」と尋ねる私にNちゃんはこう話した。

「リサちゃんが好きな“オシャレボーイ”くんのこと、好きになっちゃったんよね......お兄ちゃんと友達で、よくうちに遊びに来るっちゃんね......」

私が“オシャレボーイ”くんのことを好きだと分かっていながら、好きという感情を抑えきれなかったNちゃん。今思うと典型的な「悪い女」だった。まだまだウブだった私でも「ヤバいタイプの女と争いごとをするのはキケンだ」と、本能がそう判断した。
「いいと思う!ウチ、“オシャレボーイ”くんのこと忘れるけん!」と言った私。

すると、Nちゃんは「......ごめんね......ありがとう」とつぶやいた。

この日を境に、“恋乃音”はNちゃんのところでストップし、私はNちゃんと距離を置くようになった。

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ちまたでは「男を横取りする女」のことは「一口ちょうだい系女子」と呼ばれているらしい。

あなたを脅かす「一口ちょうだい系女子」が身の周りにいるのであれば、そんな彼女にはあじさいをプレゼントしてお灸を据えてあげよう。