「女はみんな女優」
その言葉を知ったのは、ある本を読んでいたときだった。
そのときは中学生になりたての頃で、いまいち意味をよく理解できていなかった。
そして、その意味を初めて実感したのも、中学生の頃だった。
小学校の中学年頃から仲良くなったSちゃん。
あることで嫌な思いをしていたときに、私を助けてくれた子だった。
よくお互いの家にも遊びに行くほどで、親友に近い存在だった。
◎ ◎
でも、中学生になってから少しずつ関係が変わっていった。
彼女は私を下に見るようになった。
あの頃の私は真面目で気弱で、利用しやすかったのだろう。
英語の宿題を写させてほしいというので、プリントを見せてあげたことがあった。
すると、先生から「Sと文章が同じだけど写した?」とコメントが書かれていた。
Sちゃんのプリントにも同じようなコメントがあったが、特に気にしていないようだった。
英文を自分で考える問題を丸写しなんてすれば、こうなるのも当たり前だろうと思う。
プリントを見せた私も悪いが「同じこと書かれてるね~」と、ヘラヘラしていた彼女に少し腹が立った。
同じ部活で自分はエース、私は最弱。クラスでは人気者でモテモテ。
対して、私はいてもいないような存在。
Sちゃんは、私の気になっていた人ともいつの間にか付き合っていた。
私の前では見下すような接し方だったのに、クラスの仲良し組や彼氏とは可愛らしい笑顔で話していた。「あんなに仲が良かったのにな」と残念に感じながらも、私は中学卒業と同時に彼女とは距離を置いた。
◎ ◎
高校に入学して、私は中学とはまったく違う部活に入った。
その部活では、大会以外は男女で一緒に活動していた。
部活クラッシャーまではいかないけれど、魔性の女的な子が途中から入部してきたことがあった。
彼女は同じクラスだったYさん。
小柄で可愛いらしく、でも大人っぽさがある子だった。
私は特に嫌な思いはさせられなかったけれど、部内の男子たちが何人も落とされては振られているのを見て唖然としていた。
遊ばれている男子たちにも呆れるが、部を荒らすだけ荒らして退部した彼女に「何のために入部したんだよ」とツッコミを入れたくなった。
同じ部活にもう1人、小柄で少しぽっちゃりしたMちゃんという子がいた。
その子は気が強くて、負けず嫌いな子だった。
同じ部活の2つ上の先輩と付き合い始めたらしく、たまたまいちゃついているのを見かけたことがあった。
普段みんなの前で話す強い口調とは違い、猫なで声のような感じだった。
弱い私が試合で勝ち残ると、Mちゃんは他の子に対しては何も言わないのに、私に対しては裏で悪口を垂れていた。
「表裏ありすぎだろ」と、私は気持ち悪ささえ感じた。
◎ ◎
一般の人の言う「悪い女」とは、もしかしたらちょっと違うのかもしれない。
私にとって彼女たちは悪い印象だし、恋愛事が絡むだけで「汚い」と感じてしまうほどだった。「女の子ってあんなに変わるんだな」と不思議に思ったと同時に、不信感を抱くようにもなった。
社会人になってからも、色んな女性を見てきた。その度に「女って怖いな」と感じる。
だから、私には"知り合い"はたくさんいても、本当の"友だち"は片手に収まるくらいしかいない。
かなり慎重になって厚い壁を作ってしまい、友だちの輪なんてものはなかなか広げられなくなってしまった。
私は「悪い女」にはなりたくない。
誰にも嫌な思いをさせたくないし、もっと自分らしさを出しながら生きていきたい。