私の夢は化粧品の開発をすることだった。憧れを抱いたのは小学校6年生の時である。
当時、周りの友達はみんな夢を持っていた。例えば、医者や建築家など具体的な夢ばかりだった。私は何も考えておらず、無理やりなにかを夢にしなきゃと焦っていた。
そんな時代にある日、雑誌を読んでいたら白衣の女性を見つけた。女性は商品の品質を検査しているとインタビューに答えていた。これを見た時、「あ!これだ!!」と直感的に感じた。白衣着てる女性かっこいい!と思ったのだ。さらに小さい頃からコスメが好きだったので、白衣×コスメ=化粧品の開発という方程式が自分の中で成立した。
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それからの人生は全部この夢に従って選択を行ってきた。まずは高校受験において普通科ではなく、理系に強い理数科を選択した。予想通り、高校から研究を行うなど、レベルの高い中で勉強できた。しかし、文系の方が得意だった私は数学や物理などの勉強につまずいてしまった。大学受験もこのまま理系でいいのか、文転するかかなり迷った。
けれども心の中では化粧品の開発が諦めきれず、結局私は大学も夢を基準に選択し、化学や生物を学べる理系の大学に進んだ。実際、実験が豊富でこの時には白衣は当たり前の物になっていたし、夢の半分くらい叶ったと思う。しかし、ここでも苦しんだ。手先が不器用で実験がうまくいかないこともあった。また、勉強もかなり難しく、ネガティブになることも多かった。
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私の大学では大学3年になったとき、研究室を選ぶことになる。私はここで初めて化粧品の開発という夢を基準に研究室を選択しなかった。なぜなら私は将来のことばかりを考えすぎて、今の自分を大切にできていないと思ったからだ。今、自分はどうしたいか、何に興味を持っているのかという現在に視点を持つことが大切なのではないかと考えて、研究室を選んだ。この選択がかなりよかったと思っている。
確かに研究室は大変だ。毎日決まった時間に学校に行き、実験をして、論文を読み、帰宅する日々の繰り返しだ。作業は嫌になることもある。けれども、良い結果が出ると嬉しい。そんな中、就職するか院進するかを決断する時がきた。大学でも勉強に苦しんだ私はとても迷ったが、院進することに決めた。これも現在の自分の気持ちで選択した。化粧品ではなく、もっと今の研究を深めたいと思ったからだ。やっと「夢」という呪縛から解放された気がした。
現在、私は大学院の1年生である。実験やTA、論文を読む日々に追われている。ある日鏡に映る白衣を着た自分がふと目に入った。その時、「実はもう夢叶っているじゃん、、」と思った。
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私が夢見ていた開発職はどんなことをするかはまだわからない。だけど、今はより良い社会にできるために研究をしていて、白衣はもちろんきていて、自分が思っていたことができている。今の自分に満足している。確かに、私は得意じゃないことばかりを選んできた。だけど、それは全部よかったことだったと思う。
今は自分の現在の気持ちを大切に選択を行っているが、過去にしてきた未来の夢を元に選択することも悪くなかった。自分で選択を正解だったと思えた。もし、あの時こうだったら、、と思うことはたくさんある。だけど、全て自分で決めてきたことだ。決めたことを正解にするように行動していくことが大事なのだとわかった。
私は夏から就職活動が本格的に始まる。もちろん化粧品の開発に憧れているのは事実だ。けれども、あの小学生の頃とは違い興味関心はあらゆることにあり、自分の得意不得意もわかっているつもりだ。これからはどんな選択をしても全部正解にできるように行動していきたい。それで失敗しても、それで良いと思えるように過程を大事にしていきたい。