最近、街中にいる缶ビールや缶ハイボールを立ち飲みしている人たちが、思わず目に入ってしまう。その人たちはコンビニ前や公園、駅のホーム、路上の隅などにポツンといる。1人の場合もあれば、複数人で話しながら飲んでいる場合もある。時間も昼夜、平日休日問わない。

一般的に、この光景はどう見られているのだろうか。少なくとも私にとっては、アルコールを公共の場で飲むことはあまりいい印象を受けない。酔って迷惑行為に繋がるかもしれない。

それなのに、心の奥底で「私もやってみたい」と思っている自分がいる。人の少ない時間帯の公園で、「私、悪いことやってるなー」と思いながら缶ハイボールを飲んでみたい気もする。

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これまでも、悪いことをしてみたいと思ったことは何度かあった。
例えば中学生の頃、当時学年一位の成績をキープしていた私は、定期テストを全て白紙で提出して、0点を取りたいと思っていた。勉強自体は嫌いではなかったし、勉強の成果が成績や順位で現れることにやりがいを感じていた。しかし、周囲の反応がとても苦であった。私なりに頑張って獲得したいい成績を同級生に囃し立てられることが嫌いだったのだ。一部の生徒は、私の成績表を奪って、みんなに成績を見せびらかしていた。また、教師をはじめとした周囲の大人の中に、過剰に私の成績に期待している人も見られ、その存在にうんざりしていた。これらの負の感情が積もりに積もって、白紙の答案提出を思いついた。彼らの目を欺きたかった。
しかし、結局それを実行しなかった。実行した後の説明や後処理が面倒だと思ったのだ。

他にも悪いことをしてみたかった。授業をサボる、立ち入り禁止の屋上に行く、机に描いた落書きを残したままにする。私がそういうことをする柄じゃないのは、周りも自分も分かっていた。だから、全部できなかった。

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社会人になった今、ふと、また悪いことをしてみたいと思うことが何度かある。
今の仕事はそこそこ好きだが、思いっきりサボりたい。特に天気のいい日なんかは、仕事せずに日向ぼっこしたい。
昼間からお酒を飲みたい。特別でもなんでもない日に、公園のベンチで缶チューハイを飲みたい。
お金を気にせずに買い物したい。気に入ったものを爆買いしたい。
いずれの願望も、後々に苦しむ羽目になることは分かっている。だから、やらない。

どうしても、意図的に悪いことができない。これまで、無意識で悪いことをしてしまったり、それによって人を傷つけ、迷惑をかけてしまった。無意識で悪い人になってしまうのに、意識して悪い人になることができないのはなぜだろう。結局、意識してようがしてまいが、ただ単に自分の心を守りたいだけなのかもしれない。

思い切った悪いことはできないが、たまに、ささやかな悪さをする。最近は、ハンドメイドの焼き菓子詰め合わせを一気食いしてしまった。レモンクッキーにボールクッキー、メレンゲ。それぞれ2、3個入っていたが、仕事帰りで疲れていたこともあり、無心でパクパク食べてしまった。最近体型が気になってきた私にはカロリー爆弾だったかもしれない。悪いことをしたら、ツケが返ってくる。でも、クッキーを頬張った時の幸福感で満たされたので、よしとしよう。明日は一駅分歩くか。