3月上旬の木曜日、21時30分。
仕事から帰宅し、夕食を済ませた私は約1か月後に控える資格試験の勉強をしていた。
休憩がてらスマホを開くと、かがみよかがみの公式LINEから通知が届いている。
なんだろう?と開くと、内容はかがみよかがみのリアルイベントが開催されるというお知らせだった。

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「え!!!」と声が出た。
前回もイベントへの参加を諦めたから、ものすごく参加したい!
それに、自分がこれまでに書いたエッセイもZINEにして発刊してくれるみたいだ。届いたメッセージを何度も確認してまだ参加も決めていないのにドキドキと、心が浮き立つ。

しかし、5分ほど経つとふと冷静になる。
でもなぁ、開催地は東京だから行くなら飛行機だよなぁ。即座にいつも利用している複数の旅行サイトで私の住む町から東京への航空券を調べる。金額を見て、ううむ…と少しばかり悩んでしまう。

それに資格試験も1ヶ月後に控えている。やっぱり今回も諦めるしかないのか?航空券料金や勉強の進捗状況で悩んでいたらあっという間に日付が変わってしまった。
うん、とりあえず今日は寝て明日もう一度考えよう。

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翌朝になり、出社準備をして職場へ向かう。
通勤中も仕事中も「参加するか?それとも諦めるか?」の質問がメトロノームのように脳内で無限ループを繰り返す。カチカチ、カチカチ…。
仕事中。書類を作成しながら、「参加する」に針がカチ!と大きく動いた。

やっぱり、我慢せずに参加しよう。今回参加しないと絶対に後悔する気がする。
今まで自分が一生懸命蓄えた資産も、自分が悩んだ場面でいつも自分が後悔しないようにそれなりに貯金してきたもののはずだ。今回はその資産の使い時なんじゃない?

資格試験だって、返上してその分頑張ればいいじゃん!私ならきっと頑張れるはずだ。
やっぱり私はどうしてもかがみすとさん達や編集部の方達に直接お会いしてみたい。

考えがまとまった私はすぐに申込を済ませ、東京行きの航空券を購入した。
イベントが決まってから当日を迎えるまでの約2週間、楽しみだなぁとそわそわしながら毎日の仕事も頑張れた。普段なら憂鬱な上司からの仕事の依頼も快く引き受けるような自分で過ごせた気がする。楽しみがあると何だって頑張れるんだなぁ。

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そしてあっという間に迎えたイベント当日。
Googleマップに頼りながら辿り着いた会場に緊張しながら入ると、たくさんのかがみすとさん達がすでに座っていた。どうしよう、めちゃくちゃ緊張する。
そわそわしていると、その緊張が伝わったのが両隣に座ったかがみすとさん達が「緊張しますね」と、にこっと話しかけてくれた。他愛無い話をしていると、次第に緊張も落ち着いていった。

イベントでは全員が初対面なのに、誰か一人が抱えていたモヤモヤを話すと、「その気持ち分かる~!」とか、「私は昔こんな経験をしたことがあって…」とか、ざっくばらんにお互いの経験や考えを共有しながら色んな話を聞いたり自分の経験を話したりすることができた。

きっとそれはそれぞれが自分の考えや芯をしっかり持っていて、尚且つそれを言葉にして表現してきた同士だからこそ、あっという間に打ち解けて距離も近づけたのかなと思った。

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今まで私がいつも元気をもらっていたエッセイを書いていたあの人。
何回も読み返すくらい好きなんだよなぁこの人の文章、と思っていたあの人。
私も同じ経験があったからこの文章共感したなぁと、同志に感じていたあの人。

そんな素敵なエッセイを書いた本人達が目の前にいて、直接感想や元気をもらえた感謝を伝えることができるってなんて最高なんだろう。

私は飛行機で来たけど、私のように遠方から新幹線や高速バスを使って会場まで足を運んだかがみすとさん達もたくさんいた。私は以前、「エッセイを書く私たちは同志。交わされる言葉が私の背中を押す」でも書いたけど、私たちはお互いに住む場所も、どんな仕事をしているかも、顔も知らない。知っているのはその人の紡ぐ言葉だけ。

世界や日本の様々な離れた場所で、モヤモヤを抱えながら戦う同士だと勝手に私が心強く感じているかがみすとさん達に直接会えて、話ができるって本当に奇跡だなぁと嬉しく感じた。

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今回のイベントを企画してくださった編集部の方々、このような貴重な機会を設けてくださって本当にありがとうございました。本当に参加することができてよかったです。
後悔も残さなかったので、資格試験にも集中して励んで無事に合格することができました◎

あんなに行くと決める前は散々悩んでいたくせに1人でルーヴル美術館展に行ったり、ずっと行きたかったこんにゃく寿司のお店に行ったり、ちゃっかりイベントの他にも東京でやりたいことをたくさん実行して、楽しい時間を満喫できた。

「我慢しなくて本当に良かった」

イベントを終えた後の高揚感、たくさん歩いた足の疲労感と共に、自分の書いたエッセイが掲載されたZINEを大切に抱えて飛行機に乗りこみ、私は自分の住む町へと帰ったのだった。