「めっちゃいいやん、チャンネル登録しよ!」と、YouTubeを見ていて思う瞬間がある。初めてそのチャンネルの動画を見て5分以内の出来事だ。一瞬の間に心を奪われそのコンテンツを好きになっている。これをまさに一目惚れというのだと私は思っている。
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最近私は、YouTubeのshort動画をよく見ている。short動画というのは1本60秒以内の動画のことを指している。このカップ麺が完成するよりも短い時間の中で私は心がときめく。そして、3本ほどみてカップ麺が完成する頃には、心を奪われファンになっている。
私がYouTubeのコンテンツに一目惚れするのにはあるメカニズムがある。それは、ブランディング力の高さだ。私は、ビジュアルがいいとか、声がいいとか、歌がうまいとかでは一目惚れしない。短い動画を数本見るだけで、どんな人なのかわかりやすかったり、チャンネルの方向性がわかりやすかったりする動画に心をときめかせる。もっというと、需要のあるコンテンツを作っていたり、YouTubeのアナリティクスを意識した動画を作っていたりするとすごく魅力的に感じる。
実はこのメカニズム、私のリアルでの一目惚れにも関係している。私は、最初の印象がわかりやすい人のほうに好感度を高く持ち、わかりにくい人には苦手意識を感じる。出会って数分の間で一貫性があると感じられると、安心してその場を過ごすことができる。だから、好感度が高い。だが、出会って数分の間に、矛盾を感じるとどうだろう……。なんとなく、信用できなさそうとか、予測できないことが起こりそうで不安とか、マイナスな印象を抱く。
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YouTubeはたくさんある動画の中から、たくさんいるクリエイターの中から、限られた時間でお気に入りのコンテンツを探している。リアルの人間関係は、大人になってからはそんなに時間をかけられなくなった。学生時代の友人関係の維持で正直手一杯。だから私は、無意識のうちに、「なんか、思っていたのと違った……」というような未来を避けようとしているのだと思う。
そのことから考えると、私にとっての一目惚れは脳の省エネモードの判断ということになる。判断のしやすさ、予測の立てやすさを優先して、好感度が決まる。脳が考えることをめんどくさいと思ったものには好感度を低く設定し、あまり関わらないことで判断や再検討を先延ばしにする。電気代の高騰、環境問題、ことあるごとに省エネの魅力が語られるこの時代。だからって、脳までも省エネ運転でいいのか……と私は思った。
だが、心理学の研究には多くの脳は省エネ運転が好きというデータが多くある。例えば、ステレオタイプや、認知バイアスなどだ。ステレオタイプは、思い込みや固定観念のことだ。極端な例だが「女性だからピンクが好きだろう」のようなあるカテゴリーに対して自分の経験からこうではないかという仮説のラベルを貼っている状態のことを言う。確かに、考える手間は省けるが、必ずしもこれが正しい判断というわけではない。
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ほかにも認知バイアスはいわゆる直感のことを指す。宝くじの当選確率は変わらないのに、ゾロ目の日に買ったから当たるはず…と思うことや、災害や犯罪に対して、自分だけは大丈夫と思うことなどを人は直感と呼んでいる。しかし、直感は第6感などではなく、脳が複雑なことを考えることを放棄し、省エネモードで運転して導き出した、非合理的な判断だ。
一目惚れは誰にも止められない。思い込みや直感だってその時は正しいと思う。この気持ちが本物か……その答えはきっと自分自身しかわからない。だから、私はたまに立ち止まる。そして、人間の脳はいつだって省エネキャンペーンを開催していることを思い出している。