私が長野県の南部に住んでいたとき、理想の週末を過ごす全てが揃っていました。土日休みの仕事ではなかったので、休日はだいたい平日でした。

平日休みの特権、なんと言っても平日ランチを食べに行けることです。私の職場は、最寄りのコンビニまで車で約40分もかかるほどの山の中にあり、日頃は「お昼休みに同僚とレストランでランチ♪」ができるような環境ではありませんでした。そのため、平日ランチは私にとって贅沢な時間でした。

住んでいた地域はソースかつ丼が有名で、平日のお昼でも並ぶ必要があるお店が多数ありました。千葉県で生まれ育った私にとって「かつ丼」と言えば、玉子でふわっととじられた黄色いどんぶりでしたので、甘いソースがかかった茶色いかつ丼は目新しく、新鮮なものでした。しかも多くのお店で、平日ランチはお米のおかわりが無料だったり、小鉢がついていたり、なにかとお得なのです。お店が込み合う前に有名なソースかつ丼屋さんに行けることは平日休みの恩恵の1つでもありました。

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美味しい食事でお腹を満たしたあとはゆっくりしたくなります。自宅に戻り、干しておいた洗濯物を取り込み、簡単なおつまみとお酒をもってピクニックに出発です。

私が住んでいたアパートのすぐ裏手には川が流れており、その河川敷は小さな公園になっていました。そこにレジャーシートを敷いてお昼過ぎから乾杯です。長野県は日本酒がおいしいことで有名ですが、ワインもおいしく、種類が豊富なのです。おいしい地酒へのアクセスが容易な環境はQOLを高めました。

さらに、そもそもあまり人口の多い街ではなかったので、年中お花見をしていても誰かに会うことはなく、平日の昼間は静かな時間を過ごすことができました。雄大な山々の眺望に感激しながらお酒を飲んでいると夕方前には眠くなって自宅に戻ります。

1時間~2時間ほどお昼寝をすると、18時頃には目が覚めます。カーテンが開いていても薄暗くなった部屋に「サザエさん症候群」のようなものを感じながら、洗濯物をたたんだり、水回りを掃除したり、明日からの1週間を最低限快適に過ごせるための準備をします。

そうこうしているとお腹が空いてくるので、スーパーの割引商品を求めてハンティングに出発です。アパートの隣に24時間営業のスーパーがあり、20時を過ぎるとお惣菜やお刺身が割引になるのです。そこでお酒と安くなった晩酌のお供を購入し、自宅に戻ります。

そこから、シャワーを浴びて寝る支度をしてから、第2回戦の開幕です。だらだら飲んでいるともう日付が変わる頃になり、幸せな休日だったと感じながら眠りにつきます。

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県庁所在地である長野市からも遠く、転勤が決まったときは田舎で暮らす不便さに戦々恐々としていましたが、壮大な自然を身近に感じながらの毎日は驚くほど豊かで、今はもう長野県から引っ越してしまいましたが、今思い出しても、山々に囲まれた広い空が好きだったと感じています。

さらに、実際に住んでみると近くにお母さんのように接してくれるママがいる居酒屋さんや美味しい定食屋さん、便利なスーパーもあり、仕事だけでなくプライベートも存分に楽しむことができました。今後、あんなにも過不足なくすべてが揃った環境で暮らせることはないのかもしれないと思うと少し寂しく思います。