5月ゴールデンウィーク明けの平日昼過ぎ。私は彼と一緒に両国駅へ向かう電車に乗っていた。
目的は、最近ハマったNETFLIX相撲ドラマの「サンクチュアリ」の主人公が描かれた巨大パネルを見ること。
そしてこの日のデートは、文字通り様々な「最強」を目に、そして体感することとなった。
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両国駅のプラットフォームから見えるその壁画は、全長25メートル・高さ約2.8メートル。見つけた瞬間に2人して大興奮。ドラマ内で最強の横綱を目指してのし上がる主人公をパシャパシャ。
そして同じく駅構内から見られる国技館をもっと間近で見たいと改札を出た。するとどこからか椿油の良い匂いが…。見回すと本物のお相撲さんを発見!!!
どうやらこの後、実際に国技館で5月場所が開催されるようだった。
国技館に沿って並ぶ色とりどりののぼりを眺めながら、最強にふさわしい身体つきをした彼らを見送った。
そして次に訪れたのは山手線のとある駅のラブホテル。2人してるんるんで入ったものの、なんと…満室。平日の夕方前という時間にもかかわらず。
ホテルの方より満室と言われた時には、思わず「え」と声が出てしまった。
自分たちのことは棚に上げて「みんな平日の昼間から何してんの」と思ってしまった。
なんとなく気持ちが下がってしまい、他をあたるのではなく、今日は飲む日にすることにしてホテル街を後に。
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歩きながら人間の3大欲求の中で最強なのは性欲なんじゃないかと考えた。
私たちは寝る間を惜しんで行為をすることも、そして食事より優先して愛し合うこともある。
きっとそうだそうだ、と妙に納得してまた山手線に乗り込んだ。
その後は彼お勧めの飲み屋で飲み、帰りに酔いを覚ますつもりで一駅散歩をすることにした。
実はこの日、私は8センチのサンダルを履いていた。
じんわりと、私の足裏はハイヒールの最大の難点である苦しみが始まっていた。
彼は足が痛くないか聞いてくれたが、そこでうんと言うのは謎に私のプライドが許さない。
個人的に、自由意志のもとにヒールを履くのであれば、私はこのヒールの持つ構造的な美しさの代償である足の痛みは引き受けなければならないと考えている。
笑顔で彼に大丈夫と伝えながら、私の中では戦いが始まっていた。
言うなれば、これはワークアウトと似ている。
「筋トレきっつ…、でも美しいボディラインを手に入れるために乗り切ってやる」
そう、このマインドと一緒なのだ。
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最強(美しさ)への過程には痛みが伴う場合もある。
ここで、彼が私に紹介したいと言ってくれたお店が分からなくなった。つまりは迷子。
そうそう。こんな感じで試練は唐突にやってくるのよね。
彼と別れた後は無意識に靴屋を探し、早くこのヒールを捨ててやりたいと思ったことは言うまでもない。
このデートで私は、生物として最強である相撲取り、欲求としての最強の1つである性欲、 構造美としての最強であるヒールを考えさせられる1日だった。
こんなたくさんの最強を見せて、体験させてくれた彼に感謝です。