自分の機嫌を自分で取ることが割と得意な私は、オフの日はいつも割と好きなことをしている。
本が読みたいと思ったら図書館に行って借りた本を持ってどこかカフェに行ってみたり、
散歩がしたいな!って思ったら近くの観光地に1人で行ってみたり。映画もランチも割と1人でプラーっと行ってみたりする。

理想のオフと聞くと特別なオフを考えたくなった。でも考えつくものはできそうなものばかり。できそうだと思うとそこまで“理想のオフ”という感じでもなくなる。どうせならできないだろうなぁと妄想が楽しいようなオフが良い。そうやって考えていくうちに過去に体験した最高の1日を思い出した。もうできないだろうなぁというオフの日。今回はその1日の素晴らしさを話したいと思う。

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学生時代友達が湘南のあたりに一人暮らししていた。普段は街で飲んで遊んでしていたが、たまに何人かでその子の家に集まって宅飲みをしていて、その日もそんな日のうちの1日。

夜たくさんお酒を飲んで、歌を歌って、眠たくなった人から寝て、宅飲みって感じの夜を過ごした。私と家主以外は翌日も朝から予定があるとかで、ぞくぞくと帰っていった。残された私たちはやることも食べるものもない。だらだらだらだら寝るでも起きるでもなく暑い時間を過ごしていた。

でもそれだとなんだか物足りなくて何かしたくなっていた。

そんなとき友達がふと
「ねぇ今から海行ってご飯食べん?」
と誘ってきた。

それまで私にとって夏の海はちゃんと水着を持って遊びに行く場所だった。毎日湘南の海にはたくさんの人がやって来て海を楽しんでいるのは知っている。毎年海に遊びにいく日を楽しみにしているくらい、全力で楽しめる海が大好きだったのだ。

ただその誘いを受けた時に、そんな海にフラッと手ぶらで行ってご飯を食べて帰ってくる私を想像して「べつに海を全力で楽しみませんよ」という状況に、なぜか謎の優越感を想像して私はとてもワクワクしたのだった。
「いいね!行く行く!」
二つ返事で了承した私は、昨日の服のままメイクもそこそこに海に直行した。

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海の家は想像通り盛況。海の家のお兄さんがいつも通り「ロッカー使えますよ。」と声をかけてくる。ある海の家では夏の音楽がガンガンに流れている。いかにも湘南のお兄さんお姉さんがビールを片手に談笑している。ビーチでは年下の男の子たちがバレーボールをしてたりする。
陽は出ている。
砂浜は暑い。
人間の熱量と、自然の熱量と、これぞ夏の海だ。
ワカメが打ち上がっているようなけっして綺麗なビーチとは言えない海で、たくさんの人がみーんな海を全力で楽しんでいるように見えていた。

一方で、日差しを浴びながら、ほんのり眠気を感じながら、海の家でタイ料理を食べながら、アツいアツい夏の海をどこかクールに楽しむ女二人組。私たちはご飯を食べたら少しお酒を飲んで夕方になるより少し前、まだまだ盛り上がっている途中に退散した。心の中で「私たちはご飯を食べに来たのです。」と謎の優越感を抱きながら。

帰り道どんどん日が落ちていき、空気が湿っぽいまま少し冷たくなる。夏の海の辺は夜の空気も良い。

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この日の海の楽しみ方はとっても贅沢だったと今でも思う。
ただ今の私がこの1日をまた再現できるかというと、
それをしてくれる友達、
それをできる体力、
それをしても良いやと思える莫大な時間、
これらを考えてしまい、できる!とは言い切れない。
そもそもこれを最高だと思ったのは学生時代の私を含めてのものだったような気もする。

だから私はこのオフを追い求めたりはしない。私の心の中で大事に大事に「良い日だったなぁ。」としまっておこうと思う。